南米大陸の西縁に沿って延びるアンデス火山帯は、世界的に見ても極めて大規模な火山活動地帯です。この地域では、海洋プレートであるナスカプレートおよび南極プレートが南米プレートの下に沈み込むことで、激しい地殻変動と火山活動が引き起こされています。アルゼンチン、ボリビア、チリ、コロンビア、エクアドル、ペルーの6カ国にまたがるこの火山帯は、単一の構造ではなく、複数の火山帯と、活動が停止している「火山ギャップ」によって分断されているのが特徴です。
火山帯内の個々の火山は、その形態や噴出物の組成、活動スタイルにおいて多様性を持っています。これは、属する火山帯の違いだけでなく、地殻の厚さやマグマが上昇する経路、周囲の岩石との反応(地殻同化作用)などの要因が複雑に絡み合っているためです。

Key Facts
- 形成要因:ナスカプレートと南極プレートの南米プレート下への沈み込み。
- 構成:北、中央、南、オーストラルの4つの主要火山帯に分かれる。
- 火山ギャップ:プレートの沈み込み角度が浅くなる「フラットスラブ」現象などにより、火山活動がない領域が存在する。
- 地殻の多様性:地域によって地殻の厚さが異なり、中央火山帯では最大約70kmに達する。
- マグマの制御:マグマの上昇経路は、広域的な応力よりも既存の地殻構造や弱線に支配されている。
4つの主要な火山帯
北火山帯 (NVZ)
コロンビアからエクアドルにかけて展開するこの区域は、ナスカプレートの沈み込みによって形成されました。コロンビアには19、エクアドルには55の火山が存在します。特に人口密集地に位置するネバド・デル・ルイスやガレラスなどの火山は、重大な災害リスクを抱えています。この地域の地殻の厚さは約40kmから55km以上と推定されています。
中央火山帯 (CVZ)
ペルーからチリにわたるこの帯域は、アルティプラノ高原の西端を形成しています。最大の特徴は地殻の極端な厚さであり、約70kmに達します。ここでは44の主要な活動的火山センターと18の小規模なセンターが確認されており、アルティプラノ=プナ火山複合体のような巨大な珪長質火山システムも存在します。
南火山帯 (SVZ)
チリのサンティアゴ付近(南緯33度)からアイセン州のセロ・アレナレス(南緯46度)まで、1,400km以上にわたって延びる広大な区域です。この帯域は地殻の特性や岩石の種類に基づき、さらに北・移行・中央・南の4つのセグメントに細分化されます。特に中央および南セグメントでは、リキニェ=オフキ断層がマグマの上昇路として重要な役割を果たしています。
オーストラル火山帯 (AVZ)
パタゴニア火山ギャップの南側からティエラ・デル・フエゴ諸島まで続く、最も南の火山帯です。ここでは南極プレートが沈み込んでおり、噴出物は主にアルカリ玄武岩やバサナイトで構成されています。他の火山帯に比べて活動は穏やかであり、氷河に覆われた成層火山や氷河下の火山が存在します。
火山活動を遮断する「火山ギャップ」
アンデス火山帯には、プレートの沈み込み距離は適切であるにもかかわらず、火山活動が見られない「火山ギャップ」と呼ばれる領域が3箇所存在します。
| ギャップ名称 | 位置(緯度) | 主な原因 | 分離している火山帯 |
|---|---|---|---|
| ペルー・ギャップ | 南緯3° ~ 15° | ナスカ海嶺の沈み込みによるフラットスラブ | 北火山帯 ↔ 中央火山帯 |
| パンパ・ギャップ | 南緯27° ~ 33° | フアン・フェルナンデス海嶺の沈み込み | 中央火山帯 ↔ 南火山帯 |
| パタゴニア・ギャップ | 南緯46° ~ 49° | チリ海嶺(プレート境界)の沈み込み | 南火山帯 ↔ オーストラル火山帯 |
ペルーとパンパのギャップは、沈み込むプレートの角度が非常に浅くなる「フラットスラブ」現象によってマグマの生成が抑制されています。これは太平洋のホットスポットで形成された海嶺が沈み込むことで発生します。一方、パタゴニア・ギャップはプレート境界であるチリ海嶺の沈み込みという異なるメカニズムで生じています。
地質学的メカニズムと地熱資源
マグマの上昇経路
一般的にマグマは最大主応力に平行に上昇すると考えられていますが、アンデス火山帯では異なる傾向が見られます。最新の研究によれば、マグマの経路は東西方向の広域応力ではなく、南北または北西ー南東方向の既存の地殻構造や弱線に沿って分布していることが判明しています。
後弧火山活動と地熱
プレートの沈み込み帯の背後(後弧)でも火山活動が見られます。アルゼンチンのパタゴニアやメンドーサ州では、中新世のフラットスラブ沈み込みの影響で、第四紀に後弧火山活動が発生しました。また、この地域は広大な地熱帯でもあり、古くから温泉が利用されてきました。チリのエル・タティオなどの地熱地帯が有名ですが、中米などの他地域に比べると、資源としての開発はまだ不十分な状態にあります。
Frequently Asked Questions
アンデス火山帯が4つのゾーンに分かれているのはなぜですか?
沈み込むプレートの角度や、海嶺などの海底地形の沈み込み状況が場所によって異なるためです。これにより、火山活動が活発な区域と、活動が抑制される「火山ギャップ」が交互に現れる構造になっています。
「フラットスラブ」とは何ですか?
通常、海洋プレートは急な角度でマントルへ沈み込みますが、海嶺のような浮力の高い構造物が沈み込むと、プレートが浅い角度で水平に滑る現象が起こります。これによりマグマが発生しにくくなり、地表の火山活動が停止します。
アンデスの火山活動に影響を与えるプレートは何ですか?
主にナスカプレートと南極プレートが、南米プレートの下に沈み込むことで火山活動が引き起こされています。
マグマはどのようにして地表に上がってくるのですか?
広域的な地殻応力よりも、地殻内にあらかじめ存在する断層や弱線などの構造的な隙間を縫うようにして上昇します。南火山帯ではリキニェ=オフキ断層がその主要な経路となっています。
アンデス地域で地熱発電は行われていますか?
温泉や間欠泉などの地熱活動は非常に豊富ですが、中米などの火山地帯と比較すると、エネルギー資源としての探査や開発はまだ限定的な段階にあります。
References
- "Romeral". Global Volcanism Program. 29 March 2012.
- Stern, Charles R (December 2004). "Active Andean volcanism: its geologic and tectonic setting". . 31 (2): 161–206. :10.4067/S0716-02082004000200001. 0716-0208.
- "Home – Instituto Geofísico – EPN". igepn.edu.ec. Retrieved 11 September 2015.
- Ort, M.H. (1993). "Eruptive processes and caldera formation in a nested downsag collapse caldera: Cerro Panizos, central Andes mountains". J. Volcanol. Geotherm. Res. 56 (3): 221–252. :1993JVGR...56..221O. :10.1016/0377-0273(93)90018-M.
- de Silva, S.L.; Francis, P.W. (1991). Volcanoes of the Central Andes. Berlin Heildelberg New York: Springer. p. 216.
- ; Kilian, Rolf; Kempton, Pamela D.; Tagiri, Michio (1993). "Petrography and geochemistry of Quaternary rocks from the Southern Volcanic Zone of the Andes between 41 30'and 46 00'S, Chile". . 20 (1): 33–55.
- Hickey-Vargas, Rosemary; Holbik, Sven; Tormey, Daniel; Frey, Federick A.; (2016). "Basaltic rocks from the Andean Southern Volcanic Zone: Insights from the comparison of along-strike and small-scale geochemical variations and their sources". . 258–259: 115–132. :2016Litho.258..115H. :10.1016/j.lithos.2016.04.014.
- ; Iturrizaga, Lafasam; Charretier, Sebastién; Regard, Vincent (2019). "Geomorphologic and Glacial Evolution of the Cachapoal and southern Maipo catchments in the Andean Principal Cordillera, Central Chile (34°-35º S)". . 46 (2): 240–278. :2019AndGe..46..240C. :10.5027/andgeoV46n2-3108. Retrieved 9 June 2019.
- Lara, L.; Rodríguez, C.; ; Pérez de Arce, C. (2001). "Geocronología K-Ar y geoquímica del volcanismo plioceno superior-pleistoceno de los Andes del sur (39–42°S)" [K-Ar geochronology and geochemistry of Upper Pleistocene to Pliocene volcanism of the southern Andes (39-42°S)]. Revista Geológica de Chile (in Spanish). 28 (1): 67–90. :10.4067/S0716-02082001000100004.
- Lara, L. E.; Folguera, A. (2006). The Pliocene to Quaternary narrowing of the Southern Andean volcanic arc between 37° and 41°S latitude. Vol. 407. pp. 299–315. :10.1130/2006.2407(14). .
{{}}:|journal=ignored ()