経済学の歴史において、貨幣の供給量が経済の変動にどのような影響を与えるかという問いは常に中心的なテーマでした。この分野に決定的な視点をもたらしたのが、アンナ・シュワルツミルトン・フリードマンによる共同研究です。彼らは膨大なデータに基づき、通貨政策が実体経済に及ぼす甚大な影響を明らかにしました。

Key Facts

  • 共同研究の契機:コロンビア大学および全米経済研究所のアーサー・F・バーンズの促しにより、シュワルツとフリードマンがタッグを組んだ。
  • 主要な主張:世界恐慌の主因は、連邦準備制度(FRB)による不適切な金融政策にあると分析。
  • 代表作:1963年刊行の『アメリカ合衆国通貨史(1867–1960)』が最も著名。
  • 後世への影響:元FRB議長のベン・バーナンキが、彼らの分析(FRBの失策)が正しかったことを公式に認めた。

通貨と景気循環の相関性を解き明かす

シュワルツとフリードマンの協力関係は、ビジネスサイクル(景気循環:経済活動が拡大と縮小を繰り返す周期的な変動)における貨幣の役割を検証することから始まりました。彼らは、通貨量の変動が経済に大きな影響を及ぼすという仮説を立て、緻密な検証を行いました。

その成果として1963年に発表されたのが『アメリカ合衆国通貨史(1867–1960)』です。同時に、彼らは『Review of Economics and Statistics』誌に「貨幣とビジネスサイクル」という論文を掲載し、学術界に大きな衝撃を与えました。

世界恐慌への新たな視点:「大収縮」

彼らの研究の中で特に注目を集めたのが、世界恐慌に関する分析です。彼らはこの時期の経済崩壊を「大収縮(The Great Contraction)」と呼び、その責任の多くが連邦準備制度(FRB)の失策にあると断じました。この分析は、単なる経済的な不運ではなく、政策的な誤りが破滅的な不況を招いたことを示唆していました。

この「大収縮」に関する章は、その重要性から1965年に独立した書籍として再出版されるほどの影響力を持ちました。

研究の深化と後世の評価

二人の共同研究は一冊の本に留まらず、その後も継続されました。1970年には『アメリカ合衆国通貨統計』を、1982年には米英両国の所得・物価・金利と通貨トレンドの関係を分析した著作を出版し、理論をさらに精緻化させました。

彼らの理論が実務レベルで認められた象徴的な出来事が、元FRB議長ベン・バーナンキによる謝罪に近い承認です。バーナンキは、世界恐慌におけるFRBの過ちを認め、「あなたたちが正しかった。我々がやったことだ」と述べ、彼らの研究が将来の政策ミスを防ぐ教訓になったことを強調しました。

主要著作と研究成果のまとめ

シュワルツとフリードマンの共同研究一覧
刊行年 タイトル 主な内容・特徴
1963年 アメリカ合衆国通貨史 (1867–1960) 通貨政策が経済に与える影響を分析し、世界恐慌の要因を解明。
1965年 大収縮 (The Great Contraction) 『アメリカ合衆国通貨史』の恐慌に関する章を独立させた書籍。
1970年 アメリカ合衆国通貨統計 米国の通貨に関する統計的データの集積と分析。
1982年 米英における通貨トレンド 所得、物価、金利と通貨の相関関係を米英比較で検証。

Frequently Asked Questions

シュワルツとフリードマンが共同研究を始めたきっかけは何ですか?

当時コロンビア大学および全米経済研究所に在籍し、後にFRB議長となるアーサー・F・バーンズの勧めによって、二人はタッグを組むことになりました。

「大収縮」とは何を指していますか?

世界恐慌時に起こった急激な経済活動の縮小を指します。彼らは、これが連邦準備制度(FRB)の不適切な通貨管理によって引き起こされたと考えていました。

彼らの研究は後の金融政策にどのような影響を与えましたか?

通貨供給量の管理が経済安定に不可欠であるという視点を定着させました。ベン・バーナンキ元議長が認めたように、過去の失敗を繰り返さないための重要な教訓となりました。

二人が共同で執筆した主な著作にはどのようなものがありますか?

最も有名な『アメリカ合衆国通貨史』のほか、『アメリカ合衆国通貨統計』や、米英の通貨トレンドを分析した1982年の著作などがあります。