Robert Appleton
← ホームへ戻る

カトリック百科事典20世紀初頭の信仰と知識の集大成

20世紀の幕開けとともに、カトリック教会の視点から世界を体系的に記述しようという壮大なプロジェクトが始動しました。それがカトリック百科事典(The Catholic Encyclopedia)です。この著作は、単なる宗教的な教義のまとめにとどまらず、芸術、科学、教育など、あらゆる知的・専門的分野におけるカトリック信者の功績を記録した包括的な参照図書として設計されました。

当時の英語圏、特に北米の読者に向けて、教会の憲法、教義、規律、そして歴史に関する権威ある情報を提供することを目的としていたこの事典は、後の宗教研究や歴史研究においても重要な資料となっています。

Key Facts

  • 出版期間:1907年に第1巻が登場し、1912年までに主要巻が完結。
  • 発行元:ニューヨークのロバート・アップルトン社(後にエンサイクロペディア・プレスへ社名変更)。
  • 構成:全15巻の本編に加え、索引巻および補遺巻で構成。
  • 特徴:カトリックの視点から記述されており、第2バチカン公会議(1962-65年)以前の教義を反映している。
  • 現状:著作権が消滅しパブリックドメインとなっており、オンラインで広く公開されている。

編集の背景と出版の歩み

この事典を世に送り出すため、1905年にロバート・アップルトン社(RAC)が設立されました。特筆すべきは、この会社が百科事典の出版という唯一の目的のために設立された点です。編集委員会を務めた5名のメンバーがそのまま会社の取締役を兼任し、密接な連携体制で制作が進められました。

編集チームは、チャールズ・G・ハーバーマン教授やエドワード・A・ペース教授など、学術的な権威を持つ人物で構成されていました。彼らは134回に及ぶ正式な会議を重ね、内容の範囲や計画を精査しました。また、教会の検閲官から「nihil obstat(異議なし)」の宣言を受け、ニューヨーク大司教ジョン・M・ファーリーによる「imprimatur(出版許可)」を得ることで、教会の公式な承認を得た著作としての信頼性を確保しました。

Robert Appleton

出版のタイムラインと展開

1907年に第1巻が刊行されて以降、順次巻数が積み上げられ、1912年には第15巻までが出揃いました。その後、1914年に索引巻が、1922年には第1回補遺が出版されました。また、初期の支援者向けに豪華な記念巻が贈呈されるなど、当時の社会的な関心の高さがうかがえます。

内容の特性と歴史的価値

本事典は、単なる既存資料の翻訳や編集ではなく、当時の標準的な学術書に基づいた新しい記述を追求しました。一部の欧州からの寄稿者が以前に発表した内容が含まれているものの、英語圏の執筆者による新規記事も多く盛り込まれています。

しかし、利用にあたっては時代背景への注意が必要です。この事典は1900年代初頭に固定されており、その後の大きな変化を反映していません。例えば、1929年のバチカン市国創設や、カトリック教会の教義と慣習に劇的な変化をもたらした1960年代の第2バチカン公会議の内容は含まれていません。そのため、現代の視点からは情報が古くなっている箇所が多く存在します。

なお、米国では公立図書館にこの事典を置くことに対し、「政教分離の原則に反する」という保守的な反対運動が起こり、一部の地域では法廷闘争にまで発展したという歴史的なエピソードも残っています。

デジタル時代における継承

1928年以前に米国で出版された著作物はパブリックドメインとなるため、この事典もインターネットを通じて世界中に再普及しました。1995年にはケビン・ナイト氏による「New Advent」というサイトが立ち上がり、ボランティアの手によってテキスト化が進められました。

現在では、New Adventのほか、Catholic AnswersやCatholic Onlineなどのサイトで閲覧可能です。サイトによって、原文を忠実に再現しているものや、聖書の引用形式を現代的に修正しているものなど、アプローチに違いがあります。また、Google BooksやInternet Archiveでは、当時のページをそのままスキャンしたデジタルコピーも提供されています。

事典の構成概要

以下は、本編の刊行年と編集責任者のまとめです。

カトリック百科事典(本編)の刊行概要
巻数 収録範囲(項目) 初版刊行年 主編集者
1-2 Aachen ~ Brownr 1907年 チャールズ・G・ハーバーマン
3-5 Brow ~ Fathers 1908-1909年 (編集委員会)
6-8 Fathers ~ Lapparent 1909-1910年 (編集委員会)
9-11 Laprade ~ Philip 1911年 (編集委員会)
12-15 Philip ~ Zwirner 1912年 (編集委員会)

Frequently Asked Questions

この事典は現在でも教義の参照先として有効ですか?

歴史的な視点や当時の教会の考え方を知るには非常に有用ですが、現代の教義を確認する場合は注意が必要です。特に1960年代の第2バチカン公会議以降の変更が反映されていないため、最新の情報は後継の『New Catholic Encyclopedia』などを参照することをお勧めします。

「New Catholic Encyclopedia」との違いは何ですか?

『カトリック百科事典(旧版)』は1907年から1913年にかけて出版されたものであり、『New Catholic Encyclopedia』は1967年にカトリック大学(CUA)によって出版された更新版です。後者は現代的な学術基準と更新された教義に基づいています。

どこでこの事典を無料で読むことができますか?

パブリックドメインとなっているため、New Advent、Catholic Answers、Catholic Onlineなどのウェブサイトでテキスト版を閲覧できます。また、Internet ArchiveやGoogle Booksでスキャン版を確認することが可能です。

編集にあたってどのような基準が設けられていましたか?

単なる翻訳や編纂ではなく、各分野の標準的な著作から最新かつ正確な情報を得ることが重視されました。また、教会の検閲官による「nihil obstat」と大司教による「imprimatur」を得ることで、カトリック教会の権威ある視点を維持しています。

なぜ公立図書館への設置が問題になったのですか?

当時の米国において、特定の宗教的視点を持つ事典を公立図書館に置くことが、米国憲法が定める「政教分離」の原則に抵触するという主張がなされたためです。一部の地域では裁判にまで発展しました。

References

  1. "The Catholic Encyclopedia". . Retrieved September 6, 2010.
  2. "Catholic Encyclopedia". .
  3. "Catholic Encyclopedia". Catholic Online.
  4. VolumeNamesYear first pub.
    (Incomplete)
    Chief editor
    1Aachen–Assize1907 Wikisource 1 Internet Archive 1 Google Books 1
    2Assize–BrownrWikisource 2 Internet Archive 2 Google Books 2
    3Brow–Clancy1908Wikisource 3 Internet Archive 3 Google Books 3
    4Cland–DiocesanWikisource 4 Internet Archive 4 Google Books 4
    5Diocese–Fathers1909Wikisource 5 Internet Archive 5 Google Books 5
    6Fathers–GregoryWikisource 6 Internet Archive 6 Google Books 6
    7Gregory–Infallibility1910Wikisource7 Internet Archive 7 Google Books 7
    8Infamy–LapparentWikisource 8 Internet Archive 8 Google Books 8
    9Laprade–MassWikisource 9 Internet Archive 9 Google Books 9
    10Mass–Newman1911Wikisource 10 Internet Archive 10 Google Books 10
    11New Mexico–PhilipWikisource 11 Internet Archive 11 Google Books 11
    12Philip–RevalidationWikisource 12 Internet Archive 12 Google Books 12
    13Revelation–Simon Stock1912Wikisource 13 Internet Archive 13 Google Books 13
    14Simony–TournelyWikisource 14 Internet Archive 14 Google Books 14
    15Tournon–ZwirnerWikisource 15 Internet Archive 15 Google Books 15
    16Index1914Wikisource 16 Internet Archive 16 Google Books 16
    17Supplement I1922Wikisource 17 Internet Archive 17 Google Books 17
    18Supplement II Google Books 18
    19Supplemental Year Books Supplemental Year Books 1912–1922