アルゼンチン北西部に位置するサルタ州は、地元で「ラ・リンダ(美しき地)」という愛称で親しまれている地域です。雄大なアンデス山脈から熱帯のジャングル、そして広大な平原まで、驚くほど多様な景観が共存しており、歴史的なコロニアル様式の街並みと豊かな自然が訪れる人々を魅了しています。
地理的には、北でボリビアとパラグアイ、西でチリと国境を接し、国内ではフホルフイ州やトゥクマン州などに囲まれています。この多様な立地が、文化的な交差点としての役割を州に与えています。

主要な事実(Key Facts)
- 面積:155,488 km²(アルゼンチンで6番目に広い州)
- 人口:約144万人(2022年国勢調査)
- 州都:サルタ市
- 経済の柱:製造業、石油・ガス採掘、農業(タバコ、サトウキビ、ワイン)
- 人間開発指数(HDI):0.844(非常に高い水準)
歴史の変遷:先住民の時代から州の確立まで
スペイン人の到来以前、この地にはカカン語を話すディアギタ族やカルチャキ族などの先住民が数多くの部族を形成して暮らしていました。また、プナ地域にはアタカマ族、チャコ地域にはウィチ族が居住していました。
16世紀に入るとスペインの征服者が進出し、1582年にエルナンド・デ・レルマによって「サン・フェリペ・デ・サルタ」が建設されました。その後、1813年のサルタの戦いによってスペインからの独立を果たし、1814年に現在のサルタ州の基礎が築かれました。

独立後の混乱期には、隣接するボリビアにタリハを併合されたり、1834年にフホルフイが分離独立したりするなど、境界線の変動を経験しています。また、州都サルタの歴史を象徴するコロニアル様式の建物は、今も大切に保存されています。

ダイナミックな地理と気候の多様性
サルタ州の最大の特徴は、標高差による劇的な気候の変化です。東部の低地では夏季に雨が多く、最高気温が47℃に達することもある熱帯半乾燥気候が見られます。一方、アンデス山脈の東斜面では、湿った風が山にぶつかることで大量の雨が降り、生物多様性に富んだ密林(ユンガス)が形成されています。

さらに西へ進むと、標高3,000〜4,000メートルの高地平原「アルティプラノ」が広がります。ここは冷涼な半乾燥気候で、冬にはマイナス15℃を下回る極寒の地となり、各地に塩湖が点在しています。また、この地域は地質学的に活動的であり、過去に大規模な地震が発生した歴史があります。特に1692年の地震は、現在も毎年9月に行われる「奇跡の主と聖母」の祭りの由来となっています。

州内には、標高の高い山々や険しい峠道が数多く存在し、自然の厳しさと美しさが同居しています。


経済構造と産業の特色
サルタ州の経済は多角化しており、特に製造業がGDPの約20%を占めています。エネルギー産業では、タルタガルやカンポ・ドゥランを中心に石油と天然ガスの採掘・精製が行われ、パイプラインを通じてブエノスアイレスなどの大都市へ輸送されています。鉱業では、ウランや銀の採掘が重要な役割を担っています。
農業分野では、タバコやサトウキビの生産が盛んで、特にサン・マルティン・デ・タバカルの製糖工場は州内最大規模を誇ります。また、カファヤテ周辺のカルチャキ渓谷では、標高の高い環境を活かした高品質なワイン(トロンテス、マルベック、カベルネ・ソーヴィニヨン)が生産されており、世界的に知られています。


観光のハイライト:絶景と文化遺産
州都サルタは、観光の拠点としてだけでなく、それ自体が魅力的な目的地です。特に「高地考古学博物館」では、リュジャジャコ火山で発見された3体のインカ時代のミイラ(リュジャジャコの子供たち)が展示されており、古代の謎を伝えています。

また、世界で最も高い鉄道の一つである「雲上の列車(Tren a las Nubes)」は、深い峡谷や断崖絶壁を走り抜け、標高3,775メートルのサン・アントニオ・デ・ロス・コブレスまで到達する圧巻のルートを提供しています。
![The Train to the Clouds one of the highest railways in the world, taking its way across the high peaks of the Cordillera de los Andes.[15]](/images/9d/3e/9d3ec7dbb511cb0d5b3605d8e9e39656e130c67f81a0947daa38b182174adc36.jpg)
自然愛好家には、ユンガスのジャングルが広がるエル・レイ国立公園や、サボテンが点在するロス・カルドネス国立公園などの国立公園がおすすめです。

人口構成と社会的な多様性
サルタ州の人口は約144万人で、アルゼンチン全体の約3%を占めています。特筆すべきは先住民の比率の高さで、ウィチ族、コジャ族、グアラニー族などが共生しています。また、シリア・レバノン系、スペイン系、イタリア系などの移民コミュニティも形成されており、宗教的にもユダヤ教のシナゴーグやイスラム教のモスクが存在するなど、非常に多様な文化が混在しています。


州の概要まとめ
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 行政区分 | 23 департаメント / 58 自治体 |
| 主要河川 | ピルコマイヨ川、ベルメホ川、フラメント川 |
| 主要作物 | タバコ、サトウキビ、ブドウ(ワイン) |
| 主要鉱物 | ウラン、銀 |
| 気候帯 | 熱帯半乾燥 〜 冷涼乾燥(標高により変動) |
よくある質問(FAQ)
サルタ州の「ラ・リンダ」というニックネームはどういう意味ですか?
スペイン語で「美しき地」を意味します。州都サルタの美しい街並みや、州全体に広がる多様で壮大な自然景観に由来しています。
「雲上の列車」とはどのような列車ですか?
アンデス山脈の険しい地形を走る鉄道で、峡谷や崖を越えて標高3,775メートルの高地まで登る、世界有数の高標高鉄道として知られています。
サルタ州で有名なワインの産地はどこですか?
カファヤテ周辺のカルチャキ渓谷が有名です。特に白ワインのトロンテスなどが、この地域の独特な気候と標高によって育まれています。
この地域で特に注目すべき歴史的遺産は何ですか?
高地考古学博物館に展示されている「リュジャジャコの子供たち」と呼ばれるインカ時代のミイラや、州都に残るコロニアル様式の建築物が代表的です。
サルタ州の気候は一年中同じですか?
いいえ、標高によって大きく異なります。東部の低地は暑く、西部の高地(アルティプラノ)は非常に冷涼で、冬には氷点下になるなど、地域によって全く異なる気候帯が存在します。
References
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