ミャンマーのメディア史において、ザ・ミャンマー・タイムズ(The Myanmar Times)は極めて特異な存在です。2000年に創刊されたこの新聞は、同国で最も古い民間運営の英語新聞として、政治的な激動と厳しい検閲の時代を駆け抜けてきました。英語とビルマ語の両方で情報を発信し、国内のみならず国際社会にミャンマーの現状を伝える重要な役割を担ってきました。
主要な事実(Key Facts)
- 創刊:2000年、ロス・ダンクリー氏とソニー・スウェ氏によって設立。
- 運営母体:Myanmar Consolidated Media Co. Ltd. (MCM)。
- 形式:ベルリナー形式(中判)。
- 言語:英語およびビルマ語。
- 現状:2021年のクーデター後、現在まで全サービスを停止中。
創刊から成長までの歩み
ザ・ミャンマー・タイムズは、オーストラリア人のロス・ダンクリー氏とミャンマー人のソニー・スウェ氏によって設立されました。当時、外国資本が入った唯一のビルマ系新聞であり、その運営体制は地元資本51%、外資49%という構成でした。
当初は週刊誌として発行されていましたが、2015年3月には英語版が週5日の日刊体制へと移行し、情報発信のスピードを加速させました。また、運営会社であるMCMは、健康や美容、ファッションを扱うビルマ語週刊誌「NOW!」などの関連誌も展開し、多角的なメディア運営を行っていました。

検閲と政治的圧力との闘い
ミャンマーのメディア環境は極めて厳しく、同紙も例外ではありませんでした。かつては「プレス・スクルティニー・ボード(出版審査委員会)」による厳しい事前検閲を受けており、提出した記事の約20%が却下されることも珍しくありませんでした。また、政府の宣伝記事を「国家意見」として掲載することを強制されるなど、政権の影響下にありました。
共同創設者ソニー・スウェ氏の投獄
2004年、共同創設者のソニー・スウェ氏が逮捕されるという事件が起きました。当局は、彼が審査委員会の承認を得ずに新聞を発行したとして、2005年に14年の禁錮刑を言い渡しました。この逮捕は、彼の父であるテイン・スウェ准将が軍事情報局の幹部であったことに関連した政治的な粛清であったと広く見なされています。彼は8年以上服役し、2013年に出所しました。
検閲撤廃後の展開
2012年8月、テイン・セイン政権による改革で事前検閲制度が廃止されました。これにより、報道の自由度が飛躍的に向上し、同紙もより自由な編集方針を追求することが可能となりました。その後、経営権の変遷を経て、実業家のテイン・トゥン氏が株式を取得し、運営体制が刷新されました。
国際的なネットワークと論争
MCMはミャンマー国内に留まらず、カンボジアの「プノンペン・ポスト」の支配権を取得したり、タイの「バンコク・ポスト」とコンテンツ共有協定を結んだりと、東南アジア圏での英語メディアネットワークを構築しました。
一方で、大胆な手法による論争も巻き起こしました。2007年には、デンマークの団体が広告枠を利用し、当時の国家指導者タン・シュウェ氏を批判する隠しメッセージを掲載。この「いたずら」のような広告は、検閲の穴を突いたものとして話題となり、一時的に完売するほどの社会現象となりました。
現在の状況と活動停止
近年、同紙は内部的な混乱に見舞われました。2019年にはビルマ語日刊版の編集長を含む13名のジャーナリストが予告なく解雇されるという事態が発生しています。
そして決定的な転換点となったのが、2021年2月のミャンマー軍事クーデターです。クーデター発生から20日後の2月21日、公式サイトを通じて9つのメディアサービスの停止を発表しました。当初は3ヶ月間の予定でしたが、現在に至るまでサービスは再開されていません。
基本データまとめ
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 創設年 | 2000年 |
| 本社所在地 | ヤンゴン(ミャンマー) |
| 発行言語 | 英語、ビルマ語 |
| 所有者 | Myanmar Consolidated Media Co. Ltd. (MCM) |
| 現状 | 2021年2月より活動停止中 |
Frequently Asked Questions
ザ・ミャンマー・タイムズは現在も発行されていますか?
いいえ。2021年2月のミャンマー軍事クーデター後、すべてのメディアサービスを停止しており、現在も再開されていません。
この新聞の最大の特徴は何でしたか?
ミャンマーで最も古くから存在する、民間運営の英語新聞である点です。外資の参入があった点でも、当時のミャンマーメディア界では異例の存在でした。
過去にどのような検閲を受けていましたか?
「プレス・スクルティニー・ボード」による事前検閲を受けており、多くの記事が却下されたり、政府のプロパガンダを掲載させられたりしていました。
共同創設者のソニー・スウェ氏はなぜ逮捕されたのですか?
当局の承認を得ずに新聞を発行したという名目でしたが、実際には軍内部の権力争いによる政治的な理由で逮捕されたと考えられています。
どのような関連メディアを持っていましたか?
カンボジアの「プノンペン・ポスト」の支配権を保持していたほか、タイの「バンコク・ポスト」とコンテンツを共有していました。
References
- "Editorial Masthead". Archived from the original on 16 September 2016. Retrieved 13 September 2016.
- Burma: Co-founder of Myanmar Times On Trial Archived 20 November 2008 at the , Centre for Independent Journalism, 8 February 2005.
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