1960年代後半、ヴォーカル・ジャズの女王として君臨していたナンシー・ウィルソンは、音楽的な幅を広げる大胆な挑戦を続けていました。その象徴的な作品の一つが、1969年にリリースされたスタジオアルバム『Hurt So Bad』です。本作は、彼女の洗練された歌唱力に、当時のメインストリームであったポップスやR&Bのエッセンスを巧みに融合させた一枚となっています。
本作の最大の特徴は、ジャズの枠に留まらない「ソウルフルで躍動感のあるサウンド」にあります。メインストリームのポップスから影響を受けたアレンジメントが随所に散りばめられており、聴き手を引き込むダイナミックな構成が魅力です。
Key Facts
- リリース年:1969年9月
- 音楽ジャンル:ヴォーカル・ジャズ、ソウル
- チャート実績:ビルボードTop 200に18週間チャートインし、最高92位を記録
- 制作:デヴィッド・カヴァノーがプロデュースを担当
- 収録時間:合計26分59秒
多彩なアレンジメントがもたらす統一感
『Hurt So Bad』には、ジミー・ジョーンズ、ビリー・メイ、オリバー・ネルソンといった、個性の異なる複数のアレンジャーが起用されました。一見すると多様すぎるアプローチに思えますが、結果としてアルバム全体に心地よいまとまりが生まれています。
楽曲の幅広さは特筆すべきもので、控えめながらファンキーな「Willie and Laura Mae Jones」から、感情に訴えかける「You're All I Need to Get By」、そしてエネルギッシュな「Spinning Wheel」まで、多彩な表情が展開されます。AllMusicのジェイソン・アンケニーは、この多様なアレンジャーの起用を「寄せ集め」と表現しつつも、聴後感としては「驚くほどまとまりのある作品」であると高く評価しています。
作品詳細と構成
アルバムは2枚のディスク(Side 1 / Side 2)構成となっており、当時のポップスシーンを彩った名曲たちがナンシー・ウィルソンの解釈で再構築されています。特に、ボブ・クルーとボブ・ガウディオによる「Can't Take My Eyes Off You」などのヒット曲が収録されており、彼女のヴォーカルの柔軟性が際立っています。
以下に、アルバムの基本情報をまとめます。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| レーベル | Capitol |
| プロデューサー | David Cavanaugh |
| 主なアレンジャー | Jimmy Jones, Phil Wright, Oliver Nelson, Billy May, Sid Feller |
| チャート最高位 | Billboard Top 200 #92 (1970年1月) |
トラックリスト
- Side 1
- Willie and Laura Mae Jones
- Let's Make the Most of a Beautiful Thing
- You're All I Need to Get By
- Can't Take My Eyes Off You
- Hurt So Bad
- Side 2
- Spinning Wheel
- Do You Know Why
- Come Back to Me
- Ages Ago
- One Soft Night
Frequently Asked Questions
このアルバムの音楽的な特徴は何ですか?
メインストリームのポップスやR&Bにインスパイアされた、ソウルフルで活気あるサウンドが特徴です。ジャズの洗練さとソウルの情熱が融合しています。
チャートでの成績はどうでしたか?
1969年11月8日にビルボードTop 200に登場し、その後18週間にわたってチャートインしました。1970年1月には最高92位まで上昇しました。
どのようなアレンジャーが参加していますか?
ジミー・ジョーンズ、フィル・ライト、オリバー・ネルソン、ビリー・メイ、シド・フェラーといった豪華なアレンジャー陣が楽曲ごとに担当しています。
アルバムの全体の長さはどのくらいですか?
全曲合わせて26分59秒となっており、コンパクトながら密度の高い構成になっています。
References
- Ankeny, Jason. Hurt So Bad at
- Larkin, Colin (2004). "Nancy Wilson". (Rev Upd ed.). Virgin Books. p. 941. .
- "Nancy Wilson Hurt So Bad". Retrieved October 31, 2018.