私たちの身の回りにある水や空気といった物質は、流動する際に特有の抵抗を示します。この抵抗の性質に基づき、流体力学では流体を大きく「ニュートン流体」と「非ニュートン流体」に分類します。ニュートン流体とは、流動によって生じる粘性応力が、その地点におけるひずみ速度(時間あたりの変形率)に正比例する流体のことです。
この性質を持つ流体は、かき混ぜたりポンプで送ったりしても、その流動速度が外部からの物理的な刺激(振動や攪拌)によって変化することはありません。応力の大きさが速度ベクトルの大きさに比例するという単純な関係にあるため、数学的なモデル化が容易であり、多くの実用的な計算において基礎的な指標として利用されています。
Key Facts
- 線形関係:粘性応力とひずみ速度が常に比例関係にある。
- 一定の粘度:せん断速度が変化しても粘度が変わらない。
- 代表例:水、空気、アルコール、グリセリンなどが該当する。
- 物理的特性:攪拌や振動によって流動性が変化しない。
ニュートン流体の物理的定義
流体が流動する際、周囲の流体から受ける力として「粘性応力テンソル($\\tau$)」が定義されます。同時に、流体要素が時間とともにどのように変形するかを示すのが「ひずみ速度テンソル($\\nabla v$)」です。ニュートン流体では、これら二つのテンソルが一定の粘性テンソル($\\mu$)によって結ばれています。
特に、方向による性質の差がない「等方性」を持つ流体の場合、この粘性テンソルは2つの実数係数に集約されます。これにより、連続的なせん断変形に対する抵抗と、圧縮・膨張に対する抵抗を個別に記述することが可能になります。

非ニュートン流体との違い
現実の流体の中には、この線形関係に従わない「非ニュートン流体」が多く存在します。例えば、激しく衝撃を与えると硬くなる「ウーブレック(ダイラタント流体)」や、塗布時に塗りやすく、壁に塗ると垂れにくい「非ドリップ塗料(擬塑性流体)」などが挙げられます。また、血液やポリマー溶液、溶融プラスチックなども、せん断速度に応じて粘度が変化する非ニュートン流体の代表例です。
数学的モデルと構成方程式
非圧縮・等方性流体の場合
流体が圧縮されず、かつ等方的な層流である場合、せん断応力 $\\tau$ は以下の簡潔な式で表されます。
$\\tau = \\mu \\frac{du}{dy}$
ここで $\\mu$ は動粘度と呼ばれ、流体の粘り強さを表す比例定数です。この式は、流速 $u$ の方向に対して垂直な方向 $y$ への速度勾配が、そのまま応力の大きさを決定することを示しています。
圧縮性流体への拡張
ガスなどの圧縮性流体では、より複雑なモデルが必要となります。ここでは「ガリレイ不変性(応力が流速そのものではなく、速度の空間微分にのみ依存すること)」を前提とし、体積粘性($\\zeta$)という概念が導入されます。
多くの計算では、計算を簡略化するために $\\zeta = 0$ と仮定するストークス仮説が用いられます。この仮説は単原子分子ガスでは実験的に妥当とされていますが、多原子分子のガスや液体では厳密には正しくないことが知られています。
流体挙動の分類モデル
流体の挙動を定量的に評価するために「べき乗則モデル」が利用されます。これはせん断応力とひずみ速度の関係を指数 $n$(べき乗指数)を用いて記述するものです。
| 指数 ($n$) の条件 | 流体の分類 | 特徴 |
|---|---|---|
| $n < 1$ | 擬塑性流体 (Pseudoplastic) | せん断速度が増すと粘度が低下する |
| $n = 1$ | ニュートン流体 (Newtonian) | 粘度が一定で不変である |
| $n > 1$ | ダイラタント流体 (Dilatant) | せん断速度が増すと粘度が上昇する |
Frequently Asked Questions
水は完全にニュートン流体と言えますか?
厳密な定義に完全に一致する現実の流体は存在しませんが、日常的な条件下での水や空気の挙動はニュートン流体として近似でき、実用上の計算において十分な精度が得られます。
粘度とは具体的に何を意味していますか?
粘度は流体の「内部摩擦」のようなものであり、流動しようとする力に対してどれだけ抵抗するかを示す尺度です。ニュートン流体では、この抵抗係数が流動速度に依存せず一定である点が特徴です。
非ニュートン流体になる原因は何ですか?
流体内部の分子構造や粒子の分散状態が影響します。例えば、高分子化合物(ポリマー)の鎖が流動によって整列したり、懸濁液中の粒子が密集して抵抗が増したりすることで、粘度が変化します。
ストークス仮説とはどのような考え方ですか?
体積粘性(第二粘性係数)をゼロと見なす仮説です。音波の吸収や衝撃波の減衰といった特殊な現象を扱う場合を除き、多くの流体解析において計算を簡略化するために採用されています。
血液はニュートン流体ですか?
いいえ、血液は非ニュートン流体です。赤血球などの成分が含まれているため、せん断速度によって粘度が変化する特性を持っています。
References
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