ペンシルベニア州ピッツバーグを代表するメディアであるピッツバーグ・ポストガゼット(Pittsburgh Post-Gazette)は、単なる地方紙を超え、アメリカ東部の歴史を刻んできた報道機関です。18世紀後半の創刊以来、数々の合併や所有者の変更、そして時代の荒波に揉まれながらも、地域の声を届ける役割を果たしてきました。
近年では、デジタル化への移行や経営難、激しい労働争議など、現代の新聞社が直面するあらゆる課題を体現する形となりましたが、非営利団体による救済によってその灯を絶やさず、新たな形態での運営へと踏み出しています。
Key Facts
- 創刊の歴史:1786年に「ピッツバーグ・ガゼット」として誕生し、アレゲニー山脈以西で初の新聞となった。
- 現在の形態:オンライン版は毎日更新、印刷版は週2回発行のセミウィークリー形式。
- 所有構造:2026年にベネトゥリス地域ジャーナリズム研究所(Venetoulis Institute for Local Journalism)が買収。
- 実績:1938年、1998年、2019年にピューリッツァー賞を受賞。
- 運営体制:トレシー・デアンジェロ社長とスタン・J・ウィシュノウスキー編集長が率いる。
黎明期から統合への道のり
この新聞のルーツは、1786年7月29日に創刊された週刊紙「ピッツバーグ・ガゼット」にあります。ヒュー・ヘンリー・ブラッケンリッジの奨励により誕生したこの紙は、アメリカ合衆国憲法の採択を報じるなど、建国初期の重要な局面を記録しました。1833年には市内初の日刊紙へと進化し、保守的なホイッグ党を支持する傾向にありました。
一方で、1842年には民主党寄りの「ピッツバーグ・ポスト」が創刊され、ガゼット紙とは激しい編集上の対立を繰り広げていました。この二つの対立する潮流は、1927年の業界再編によって一つにまとまります。ウィリアム・ランドルフ・ハーストとポール・ブロックによる複雑な取引を経て、午前刊の2紙が統合され、現在の「ピッツバーグ・ポストガゼット」が誕生しました。

拠点の変遷とインフラの整備
長らく同紙の象徴であったのが、1927年に建設され1962年に拡張されたプレス・ビルディングです。この建物は2015年まで本社として機能し、ピッツバーグのダウンタウンにおける報道の拠点となりました。

しかし、時代の変化に伴い、2015年に本社をノースショア地区の最新設備を備えたオフィスへ移転しました。これにより、半世紀以上にわたるダウンタウンでの歴史に幕を閉じました。また、物流面では2014年にファインドレイ・タウンシップに新たな配送センターを確保し、効率的な配布体制を構築しています。

かつての本社ビルは2019年にDiCicco Development社に売却されましたが、今なお地域のランドマークとして記憶されています。

激動の2020年代:ストライキと閉鎖の危機
21世紀に入り、同紙は深刻な財務上の困難に直面しました。特に2022年10月から2025年11月まで続いた大規模なストライキは、広告・配送・制作部門から編集局に至るまで広がり、労働権利を巡る激しい争いとなりました。この期間、ストライキ参加者は独自のオンライン紙「ピッツバーグ・ユニオン・プログレス」を発行し、抗議の声を上げ続けました。
2026年1月、親会社のブロック・コミュニケーションズは、過去20年で3億5,000万ドル以上の損失を出したことや、労働法違反に関する判決などを理由に、5月3日をもって閉刊することを発表しました。しかし、閉刊直前の4月、ボルチモア・バナー紙を運営する非営利のベネトゥリス地域ジャーナリズム研究所が資産買収を表明し、劇的な形で存続が決まりました。
編集方針の転換と論争
伝統的にリベラルな傾向にあった同紙ですが、2010年代後半から保守的な色合いを強めました。特に2018年にオハイオ州の「ザ・ブレイド」紙と編集部門を統合し、ドナルド・トランプ前大統領を支持するキース・バリス氏が編集責任者に就任したことで、その傾向は顕著となりました。2020年には、1972年のリチャード・ニクソン以来となる共和党候補への支持を表明しています。
この方針転換は内部の摩擦も生みました。2018年には、トランプ氏を風刺し続けたベテラン風刺漫画家のロブ・ロジャース氏が解雇され、報道の自由を侵害しているとして国内外から強い批判を浴びました。
実績とメディア展開
数々の困難がありながらも、ジャーナリズムとしての質は高く評価されており、3度のピューリッツァー賞受賞という快挙を成し遂げています。また、かつてはテレビ局WIIC-TV(現WPXI)の立ち上げに参画するなど、放送メディアへの展開も試みました。現在はCBS系列のKDKA-TVと主要なニュースパートナーシップを結んでいます。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 創刊年 | 1786年(ピッツバーグ・ガゼットとして) |
| 現在の所有者 | ベネトゥリス地域ジャーナリズム研究所 |
| 発行形態 | デジタル版(毎日)/印刷版(週2回) |
| 発行部数 | 印刷版 33,000部 / デジタル購読者 50,000人 |
| 主要受賞歴 | ピューリッツァー賞(1938, 1998, 2019年) |
Frequently Asked Questions
ピッツバーグ・ポストガゼットはなぜ一度閉刊することになったのですか?
親会社のブロック・コミュニケーションズが、過去20年間で3億5,000万ドルを超える巨額の損失を出したことや、長期にわたる労働争議に伴う法的判決などの影響で、運営継続が困難と判断したためです。
現在はどのような形態で運営されていますか?
非営利団体であるベネトゥリス地域ジャーナリズム研究所によって買収され、地域ジャーナリズムの維持を目的とした新しいビジネスモデルの下で運営されています。
印刷版の発行頻度はどうなっていますか?
かつての日刊体制から縮小し、現在は週に2回のみ印刷版を発行するセミウィークリー形式となっています。一方で、デジタル版は毎日更新されており、オンラインへの移行を加速させています。
この新聞の歴史的な重要性はどこにありますか?
1786年の創刊当時、アレゲニー山脈以西で初めて発行された新聞であり、アメリカ合衆国憲法の採択など、国家の形成期における重要な出来事を記録し続けた点にあります。
編集方針にどのような変化がありましたか?
長らくリベラルな立場を取ってきましたが、2010年代後半に編集体制の統合を経て保守化し、2020年にはドナルド・トランプ氏の再選を支持するなど、大きな転換を迎えました。
References
- Majid, Aisha (February 29, 2024). "Paying for local news online: Paywalled US local news titles ranked". Press Gazette. Retrieved November 21, 2025.
- Winsor, Morgan (June 16, 2018). "Cartoonist fired for being critical of Trump: 'They've not silenced me". ABC News. Retrieved June 26, 2020.
- Lyons, Kim (June 15, 2018). "Pittsburgh Post-Gazette Cartoonist Fired as Paper Shifts Right". The New York Times. Retrieved June 23, 2020.
- Robertson, Katie (April 14, 2026). "Pittsburgh Post-Gazette Saved From Closure by Nonprofit". The New York Times. 0362-4331. Retrieved June 12, 2026.
- "About Us". Pittsburgh Post-Gazette. Retrieved July 7, 2026.
- Andrews, p. 1.
- "The Intellectual Life of Pittsburgh 1786–1836: II.: The Newspapers". Western Pennsylvania Historical Magazine. 14 (1). Historical Society of Western Pennsylvania. January 1931. Archived from the original on September 24, 2014.
- Andrews, p. 38.
- Thomas, p. 42.
- Thomas, p. 43.
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