Rape of Persephone. Hades with his horses and Persephone (down). An Apulian red-figure volute krater, c. 340 BC. Antikensammlung Berlin
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ペルセポネの略奪神話の悲劇を彩る西洋美術の系譜

西洋美術の歴史において、ドラマチックな構図と強い感情表現を伴う主題として繰り返し描かれてきたのが「ペルセポネの略奪」です。この物語は、冥界の王ハデスが、地上の女神デメテルの娘であるペルセポネを強引に連れ去るというギリシャ神話の一場面に基づいています。

なお、英語圏で用いられる「Rape」という表現は、現代的な意味での性的暴行ではなく、ラテン語の「raptus(強奪する、連れ去る)」に由来しています。これは伝統的に「花嫁の誘拐」を指す言葉として美術史や古典文学の中で使われてきました。

神話の背景:冥界への連行

物語の始まりは、ハデスがペルセポネを妻にしたいと願ったことにあります。彼は父であるゼウスから承諾を得て、大地の女神ガイアの助力を借りて計画を実行しました。ある日、ペルセポネが野原で花を摘んでいたところ、ハデスが大地を裂いて戦車で現れ、彼女を無理やり冥界へと連れ去ったのです。

この衝撃的な事件を目撃したのは、ヘカテとヘリオスのみであり、後に彼らがデメテルにこの事実を伝えました。

Rape of Persephone. Hades with his horses and Persephone (down). An Apulian red-figure volute krater, c. 340 BC. Antikensammlung Berlin

Key Facts

  • 主題:冥界の王ハデスによるペルセポネの強制的な連行。
  • 用語の定義:「Rape」はラテン語のraptus(強奪)に基づき、伝統的な「誘拐」を意味する。
  • 主要人物:ペルセポネ、ハデス、ゼウス、デメテル、ガイア、ヘカテ、ヘリオス。
  • 芸術的価値:古代の壁画からバロック期の彫刻まで、時代を超えて多くの巨匠に描かれた。

時代を超えて描かれた名画たち

この神話的テーマは、ルネサンスからバロック時代にかけて多くの画家たちを魅了しました。

バロック期の巨匠によるアプローチ

ピーテル・パウル・ルーベンスは、1636年から1637年にかけて「プロセルピナ略奪」を描きました。もともとはスペイン王室が所有し、失われた「トレ・デ・ラ・パラダ」を飾るための作品でした。この作品は後にフアン・バウティスタ・マルティネス・デル・マソによって模写され、19世紀には版画としても普及しました。

Peter Paul Rubens' The Rape of Proserpina, 1636-1637

また、レンブラントによる作品(1631年頃)も知られています。署名はありませんが、その独特のスタイルと構成からレンブラントの手によるものとされており、現在はベルリンの絵画美術館(ゲメルデガレリー)に収蔵されています。

その他の重要な絵画作品

  • アレッサンドロ・アッローリ:1570年に制作された大型の木製パネル画。サルヴィアティ家の依頼により制作され、長らくヴィラ・サルヴィアティに置かれていました。
  • ルカ・ジョルダーノ:フィレンツェのメディチ・リカルディ宮殿の天井画に向けた油彩習作(1682年〜1685年)を制作。そのうち10点がナショナル・ギャラリーに所蔵されています。
  • 古代マケドニアの壁画:紀元前4世紀半ば、ヴェルギナの「マケドニア王墓I」に見られる壁画。経年劣化により判別が困難ですが、戦車に乗るハデスとペルセポネの姿が確認できます。

彫刻における表現

絵画だけでなく、立体作品としてもこの主題は追求されました。特にジャン・ロレンツォ・ベルニーニが1621年から1622年にかけて制作した大理石彫刻は、バロック彫刻の傑作として知られています。

その他の例としては、シエナのドゥオーモにあるピントゥリッキョによるピッコローミニ図書館の円蓋画や、トゥールーズのサン・レイモン美術館に所蔵されているローマ時代のヴィラ・キラガン出土の彫刻などが挙げられます。

The Rape of Persephone, musée Saint-Raymond, Toulouse, inv. Ra 152

作品概要まとめ

ペルセポネの略奪をテーマにした主要作品
作者/出土地 形式 制作年代 特徴・現在の所在
ベルニーニ 大理石彫刻 1621-1622年 バロック期の代表的な彫刻群
ルーベンス 油彩画 1636-1637年 スペイン王室所有、後に模写・版画化
レンブラント(帰属) 油彩画 1631年頃 ベルリン絵画美術館所蔵
アッローリ 木製パネル画 1570年 サルヴィアティ家による依頼作
マケドニア王墓I 壁画 紀元前4世紀半ば ヴェルギナに現存する古代壁画

Frequently Asked Questions

「Rape」という言葉にはどのような意味がありますか?

この文脈における「Rape」は、ラテン語の「raptus」に由来し、「強奪」や「連れ去る」ことを意味します。現代の言葉ではなく、伝統的な「花嫁の誘拐」という神話的・歴史的な文脈で使われています。

ハデスはどのようにしてペルセポネを連れ去ったのですか?

ハデスはゼウスの許可とガイアの助けを得て、ペルセポネが花を摘んでいた地面に裂け目を作り、戦車で現れて彼女を無理やり冥界へ連行しました。

この事件を目撃していた人物は誰ですか?

ヘカテとヘリオスの二人がこの略奪を目撃しており、後にその事実をペルセポネの母であるデメテルに伝えました。

レンブラントの作品は本物であると証明されていますか?

作品に署名はありませんが、そのスタイルや構成からレンブラントによるものと広く認められており、ベルリンのゲメルデガレリーに収蔵されています。

ルーベンスの作品はどこに飾られていたのですか?

もともとはスペイン王室が所有し、現在は失われた「トレ・デ・ラ・パラダ」という建物を装飾するために制作されました。

References

  1. Jones, Brandon (January 2019). "The Poetics of Legalism: Ovid and Claudian on the Rape of Proserpina". Arethusa. 52 (1): 71–104. :10.1353/are.2019.0002.  202374163.
  2. to Demeter 186
  3. (1570). The Abduction of Proserpine (Oil on panel).
  4. Bryun, J; Haak, B.; Levie, S.H.; Van Thiel, P.J.J.; Van De Wetering, E. (1982). "The abduction of Proserpina". A Corpus of Rembrandt Paintings. Vol. 1. p. 365.
  5. (1636–1637). The Rape of Proserpine (Oil on canvas).
  6. . Mythological Scene with the Rape of Proserpine (Ceiling fresco).
  7. Erksine, A.; et al., eds. (2017). "THE ROYAL COURT IN ANCIENT MACEDONIA: THE EVIDENCE FOR ROYAL TOMBS". The Hellenistic Court. Bristol. p. 410.{{}}: CS1 maint: location missing publisher ()
  8. Stefanakis, Μ. Ι.; Vlavogilakis, Α. (15 February 2014). "Reproducing the Wall Painting of the Abduction of Persephone (Vergina-Macedonia): Conditions and Restrictions for a Successful Archaeological Experiment". Exarc Journal (EXARC Journal Issue 2014/1).

📸 フォトギャラリー

Rape of Persephone. Hades with his horses and Persephone (down). An Apulian red-figure volute krater, c. 340 BC. Antikensammlung Berlin
Peter Paul Rubens' The Rape of Proserpina, 1636-1637
The Rape of Persephone, musée Saint-Raymond, Toulouse, inv. Ra 152