地球内部で生成された灼熱のマグマが冷却されるとき、そこに含まれる成分はランダムに固まるわけではありません。特定の順序に従って鉱物が結晶化していくこのプロセスを体系化したのが、カナダの岩石学者ノーマン・L・ボーエンによるボーエンの反応系列です。この理論は、なぜ特定の鉱物が共存し、他の鉱物とは決して一緒に見つからないのかという地質学的な謎を解き明かす鍵となります。
ボーエンは20世紀初頭、岩石粉末を加熱して融解させ、それを段階的に冷却させるという実験を繰り返しました。この過程で、玄武岩質マグマが「結晶分化作用(先にできた結晶が沈殿して取り除かれ、残った液体組成が変化していく現象)」を起こす際の理想的な鉱物生成順序を導き出しました。

Key Facts
- 結晶化の順序: 高温(約1200°C)から低温(約600°C)へと温度が下がるにつれ、生成される鉱物が変化する。
- 二つの経路: 鉱物の生成ルートは、組成が段階的に変わる「連続系列」と、種類が劇的に変わる「不連続系列」に分かれる。
- 安定性と風化: 高温で形成された鉱物ほど、地表の低温環境では不安定であり、風化しやすい。
- 岩石の履歴: 岩石に含まれる鉱物の組み合わせを分析することで、その岩石が形成された当時の温度条件を推定できる。
鉱物生成の2つのルート
ボーエンの反応系列は、大きく分けて「不連続系列」と「連続系列」という2つのブランチで構成されています。
不連続系列(苦鉄質鉱物)
主に鉄やマグネシウムを多く含む苦鉄質鉱物がこのルートに属します。最も高温の状態で最初に結晶化するのはカンラン石です。もしこれらの結晶がマグマから分離されずに留まった場合、温度の低下に伴って再結晶し、輝石、角閃石、黒雲母へとその姿を変えていきます。
連続系列(長石類)
一方で、ケイ酸やアルミニウムを主成分とする長石類は、組成が連続的に変化しながら結晶化します。最初はカルシウムに富んだ斜長石が形成されますが、温度が下がるにつれてナトリウムの含有量が増え、最終的にナトリウムに富んだ斜長石へと移行します。
さらに冷却が進むと、正長石(カリ長石)、白雲母、そして最も低温で結晶化する石英(クォーツ)へと至ります。
化学的安定性と「金ディッチの溶解系列」
この反応系列は、単に生成順序を示すだけでなく、鉱物が地表でどれだけ耐えられるかという「安定性」とも密接に関係しています。これを金ディッチの溶解系列と呼びます。
鉱物は、自分が形成されたときと同じ温度や圧力の環境下で最も安定します。そのため、1200°Cという極めて高い温度で生まれたカンラン石などは、低温の地表環境においては非常に不安定であり、急速に風化が進みます。対照的に、低い温度で形成された石英などは、地表の環境に近いため非常に安定しており、分解されにくい性質を持ちます。

鉱物結晶化のまとめ
以下に、温度変化に伴う主要な鉱物の生成順序をまとめます。
| 温度帯 | 不連続系列(苦鉄質) | 連続系列(長石・珪長質) |
|---|---|---|
| 高温 (約1200°C) | カンラン石 | カルシウム富化斜長石 |
| 中温 | 輝石 → 角閃石 → 黒雲母 | ナトリウム富化斜長石 |
| 低温 (約600°C) | - | 正長石 → 白雲母 → 石英 |
Frequently Asked Questions
ボーエンの反応系列とは具体的に何を説明するものですか?
玄武岩質のマグマが冷却される際に、どのような順番でケイ酸塩鉱物が結晶化するかというプロセスを体系化したものです。これにより、岩石の組成からその形成環境を推測することが可能になります。
「連続系列」と「不連続系列」の違いは何ですか?
連続系列は、長石のように成分比率(カルシウムからナトリウムへ)が滑らかに変化しながら結晶化するルートです。不連続系列は、カンラン石から輝石、角閃石へと、鉱物の種類そのものが段階的に変化するルートを指します。
なぜ高温でできた鉱物は風化しやすいのですか?
鉱物は形成時の温度・圧力条件に近い環境で最も安定するためです。高温環境で誕生した鉱物は、低温の地表環境とは化学的な乖離が大きく、不安定なため分解(風化)しやすくなります。
結晶分化作用とはどのような現象ですか?
マグマから最初に結晶化した鉱物が、重力などで沈殿して液体部分から取り除かれる現象です。これにより、残ったマグマの化学組成が変化し、次に異なる種類の鉱物が結晶化することになります。
References
- ↑ (1957). "Norman Levi Bowen 1887-1956". Biographical Memoirs of Fellows of the Royal Society. 3: 6–26. :10.1098/rsbm.1957.0002. 769349. 73262622.
- ↑ Bowen, N.L. (1956). The Evolution of the Igneous Rocks. Canada: Dover. pp. 60–62.
- ↑ Bowen, N. L. (1922). "The Reaction Principle in Petrogenesis". The Journal of Geology. 30 (3): 177–198. :10.1086/622871.
- ↑ Klein, Cornelis and Cornelius S. Hurlbut, Jr., Manual of Mineralogy, Wiley, 20th ed. 1985, p. 476
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