私たちが日常的に利用する図書館やデータベースの背後には、図書館情報学(Library and Information Science: LIS)という学際的な学問領域が存在します。この分野は、単に本を管理することではなく、情報の収集、組織化、保存、そして効率的な提供という一連のプロセスを、管理学、情報技術、教育学などの視点から研究するものです。
古くから人類は知識を蓄積してきましたが、それをいかに体系的に整理し、後世に伝えるかという課題は常にありました。かつての知の殿堂であるアレクサンドリア図書館のような初期の形態から、現代のデジタルライブラリに至るまで、その手法は絶えず進化し続けています。

Key Facts
- 学問の定義:情報の収集・組織化・保存・普及を目的とした、管理学やIT、教育学を統合した多角的な分野。
- 名称の変遷:「図書館経済学」から「図書館科学」、そして現代の「図書館情報学(LIS)」へと発展。
- 主要な分類法:メービル・デューイによる十進分類法などが、世界的な文献整理の標準として活用されている。
- 専門領域の多様性:公共、学校、大学、アーカイブ、そして機密情報を扱う特殊図書館まで幅広い。
- 倫理的基盤:知的自由の保障と、情報への自由なアクセス権の確保を最優先事項としている。
図書館情報学の歴史的展開
概念の誕生と初期の体系化
この分野を一つの学問として定義したのは、バイエルンの司書マルティン・シュレッティンガーです。彼は19世紀初頭の著作において、それまでの自然志向な分類ではなく、アルファベット順による整理などの効率的な運営手法を提唱しました。
その後、17世紀にはガブリエル・ノードが図書館設立に関する助言書を著し、体系的な蔵書構築の基礎を築きました。こうした先駆的な取り組みが、後の専門的な教育機関の設立へとつながります。

アメリカにおける専門教育の確立
1887年、メービル・デューイによってコロンビア大学にアメリカ初の図書館学校(当時は図書館経済学校)が設立されました。デューイが1876年に考案した「十進分類法」は、トピックごとに文献を整理する画期的な手段となり、世界中に普及しました。

20世紀に入ると、ウィリアム・ステットソン・メリルが実務的な分類基準を提示し、一方でランガナサンは哲学的なアプローチから図書館運営の法則を構築するなど、理論と実践の両面から発展を遂げました。
現代のLIS:情報科学への統合
1960年代後半、コンピュータ能力の飛躍的な向上に伴い、従来の「図書館科学」に「情報科学(Information Science)」の視点が融合し始めました。1964年のピッツバーグ大学を皮切りに、多くの教育機関が名称を「図書館情報学(LIS)」へと変更しました。これは、扱う対象が物理的な「本」から、あらゆる形態の「デジタル情報」へと拡大したことを意味しています。
現代では、カナダの教育現場で利用される米国議会図書館分類法(LCSH)のスケジュールのように、高度に専門化されたメタデータ管理や分類体系が運用されています。

多様な図書館の形態
LISの適用範囲は非常に広く、目的に応じて以下のような形態に分かれています。
- 公共・学校・大学図書館:地域住民や学生、研究者に開かれた一般的な情報提供施設。
- アーカイブ:歴史的価値のある記録や公文書を長期的に保存する施設。
- 特殊図書館:特定の組織や専門分野に特化した図書館。例えばCIA図書館のような施設では、職員向けに12万点以上の資料や多数の定期刊行物を管理し、機密性の高い情報の流通を制御しています。
知識組織化と専門的アプローチ
LISの核心は、膨大なデータの中から必要な情報をいかに素早く、正確に見つけ出すかという「知識組織化」にあります。インターネット普及以前から、詳細な書誌記述の提供と、情報オブジェクト間の関係性を明確にすることが重視されてきました。
また、現代のLISでは以下のサブフィールドが重要な役割を担っています。
- 情報行動論:人々がどのように情報を探し、利用するかを研究する。
- デジタル保存:デジタルデータの劣化を防ぎ、永続的にアクセス可能にする。
- 情報リテラシー:情報を適切に評価し、活用する能力を育成する。
専門職としての倫理
アメリカ図書館協会(ALA)が定める倫理綱領に代表されるように、LISの専門家は「知的自由」と「情報へのアクセス権」の擁護者としての役割を担っています。政治的な状況に左右されず、次世代まで自由に情報が流れる環境を維持することが、この職業の社会的使命とされています。
LISの概要まとめ
| 区分 | 主な内容・目的 | 具体例・手法 |
|---|---|---|
| 組織化 | 情報の体系的な分類と検索性の向上 | デューイ十進分類法、メタデータ作成 |
| 保存 | 物理的・デジタル的な記録の永続化 | アーカイブ管理、デジタル保存 |
| 普及 | ユーザーへの効率的な情報提供 | レファレンスサービス、情報リテラシー教育 |
| 倫理 | 知的自由とアクセスの平等性の確保 | ALA倫理綱領、検閲への対抗 |
Frequently Asked Questions
図書館科学と情報科学の違いは何ですか?
図書館科学は主に物理的な蔵書の管理や組織化、図書館の運営に焦点を当てていました。一方、情報科学はデータの処理、検索、伝達といった、媒体を問わない情報の流れを研究します。現代のLISは、この両者を統合し、物理的資料とデジタル情報の双方を扱う学問となっています。
デューイ十進分類法とはどのようなシステムですか?
メービル・デューイが考案した、あらゆる知識を10の主要なカテゴリーに分け、それをさらに細分化して数字で表す分類法です。これにより、世界中の図書館で共通の基準を用いて本を整理し、利用者が目的の資料を容易に見つけられるようになっています。
特殊図書館とは具体的にどのような場所ですか?
政府機関、企業、病院、法律事務所など、特定の組織の目的のために設置された図書館です。例えばCIA図書館のように、一般には公開されない機密資料を管理し、組織内の専門的な意思決定を支援するための情報リソースを提供します。
LISにおいて「メタデータ」はなぜ重要なのですか?
メタデータとは「データに関するデータ」のことです。本のタイトル、著者名、出版年などの書誌情報がこれにあたります。適切にメタデータを付与することで、膨大なデジタルアーカイブの中から、キーワード検索などで目的の情報を瞬時に抽出することが可能になります。
図書館員の役割はデジタル時代にどう変わりましたか?
単なる「本の貸出管理」から、「情報コンサルタント」や「データキュレーター」への転換が進んでいます。情報の真偽を見極めるリテラシー教育の提供や、複雑なデータベースからの情報抽出、デジタル資産の長期保存など、より高度な専門性が求められるようになっています。
References
- (DDC) used the term "library economy" for class 19 in its first edition from 1876. In the second edition (and all subsequent editions) it was moved to class 20. The term "library economy" was used until (and including) the 14th edition (1942). From the 15th edition (1951) class 20 was termed library science, which was used until (and including) 17th edition (1965) when it was replaced by "library and information sciences" (LIS) from the 18th edition (1971) and forward.
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