Overgrazing by livestock can lead to land degradation.
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土地劣化の現状と対策地球規模の環境危機を食い止めるために

私たちが生きる地球の土壌が、いま深刻な危機に瀕しています。土地劣化とは、人間活動や自然条件の相互作用によって、土地の健康状態が悪化し、本来持っていた生産性が低下する現象を指します。これは単なる土壌の問題ではなく、食料供給や水資源、さらには地球全体の生態系に直結する重大な課題です。

Key Facts

  • 世界中の土地の約30%がすでに劣化しており、約32億人がその影響圏に住んでいる。
  • 2050年までに、現状のままでは最大90%(GEF予測では95%)の土壌が劣化する可能性がある。
  • 人間による土地劣化の60%以上が、持続不可能な農業や管理手法に起因している。
  • 土地劣化による世界経済の損失額は、2050年までに23兆ドルに達すると推計されている。
  • 耕作地の劣化をわずか10%回復させるだけで、年間1億5,400万人分以上の食料を増産できる可能性がある。

土地劣化の定義と規模

土地劣化は、専門的な視点から「乾燥地の生物学的または経済的な生産性の低下」、あるいは「生態系サービスの長期的な喪失や劣化」と定義されています。簡単に言えば、土地が本来持っていた価値や機能を失い、望ましくない状態に変化することを意味します。

その規模は膨大です。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告によれば、氷のない陸地面積の約4分の1が人間活動による劣化にさらされています。特に農業地における土壌浸食(土壌が削り取られること)の速度は、自然な土壌形成速度の11倍から、慣行的な耕作法では100倍以上に達するとされています。

Human-induced land degradation, 2020.

年間の損失量に目を向けると、ギリシャの国土面積に相当する約1,200万ヘクタールの生産的な土地が毎年失われています。2024年の国連の発表では、世界の土壌の75%が何らかのレベルで劣化しており、この傾向が続けば2050年にはその割合が90%にまで上昇すると警鐘を鳴らしています。

The rate of global tree cover loss has approximately doubled since 2001, to an annual loss approaching an area the size of Italy.[17]

劣化を引き起こす主な要因

土地劣化の要因は複雑に絡み合っていますが、その中心にあるのは持続不可能な土地利用です。特に農業分野の影響が大きく、2025年までに9億9,600万ヘクタールの農地が不適切な管理によって劣化しました。

人間活動による直接的な原因

  • 不適切な農業慣行: 深すぎる耕起や、収穫後の土壌露出による養分流出。不耕起栽培に比べ、慣行的な耕作地は5〜10倍速く劣化します。
  • 単一栽培(モノカルチャー): 特定の作物だけを栽培することで地域の生態系バランスが崩れます。
  • 過剰な利用: 家畜による過放牧や、計画性のない森林伐採、過剰な伐採などが挙げられます。
  • 不適切な灌漑: 水管理の失敗による塩類集積などが土壌を悪化させます。
Overgrazing by livestock can lead to land degradation.

現代的な劣化の形態

伝統的な風食や水食に加え、近年の50年で新たな形態の劣化が現れています。化学物質による汚染、都市化や道路建設による耕作地の喪失、事故による放射能汚染、さらには武力紛争に伴う土地利用の制約などが含まれます。現在、評価可能な土地劣化のタイプは36種類以上に及びます。

Serious land degradation in Nauru after the depletion of the phosphate cover through mining

気候変動との相互作用

気候変動は土地劣化を加速させる増幅装置として機能します。特に低地の沿岸部、河川デルタ、乾燥地、永久凍土地域でその傾向が顕著です。海面上昇による海水浸入は、デルタ地帯や低島において深刻な土地劣化を引き起こすリスクとなっています。

また、1961年から2013年にかけて、干ばつに見舞われる乾燥地の面積は年率1%以上のペースで増加しました。こうした環境悪化は、特に貧困層に深刻な打撃を与えており、世界的に貧困層の74%が土地劣化の直接的な影響を受けていると報告されています。

Potato field with soil erosion

社会・経済への深刻な影響

土地の劣化は、単に植物が育たなくなるだけではありません。土壌が持つ保水・ろ過能力が低下することで水不足が加速し、農業生産や生態系サービスへのリスクが高まります。

食料安全保障と健康への打撃

特に南アジアやサハラ以南のアフリカでは、土地の劣化が貧困や子供の成長阻害(スタインティング)と密接に関連しています。2025年のデータでは、土地劣化による収量減少が起きている地域に、成長阻害に苦しむ5歳未満の子供が4,700万人居住しているとされています。

Soil erosion in a wheat field near Pullman, US

紛争と移住の誘発

肥沃な土地の減少は、限られた資源を巡る競争を激化させます。1990年代以降のアフリカにおける国内紛争の多くが、こうした農地争奪戦に関連していると分析されています。また、住み慣れた土地で生活できなくなったことによる「環境移民」の増加も懸念されています。

Estimated annual and average agricultural production losses due to land degradation by income group

回復への道と持続可能な管理

絶望的な状況に見えますが、適切な介入によって土地を再生させることは可能です。国連の持続可能な開発目標(SDGs)のターゲット15.3では、2030年までに劣化地を回復させ、「土地劣化の中立性(Land Degradation Neutrality)」を実現することを掲げています。

土地の回復には、予防、緩和、そして完全な復元という段階的なアプローチが必要です。例えば、放棄された耕作地を再び生産的に利用できれば、2億9,200万から4億7,600万人の人々に食料を供給できる可能性があります。

List of UN Food and Agriculture Organization recommended responses across land degradation stages from improving land management to full-scale land restoration.

土地劣化の概要まとめ

土地劣化の主要データと影響まとめ
項目 現状・予測 主な影響・要因
劣化面積 世界の土地の約30% 不適切な農業、森林伐採、気候変動
影響人口 約32億人 食料不足、水不足、貧困の悪化
経済的損失 2050年までに23兆ドル(推計) 農業生産性の低下、生態系サービスの喪失
将来予測 2050年までに最大90-95%が劣化 現状の持続不可能な管理を続けた場合
回復の可能性 耕作地の10%回復で1.54億人が救済 持続可能な土地管理(SLM)の導入

Frequently Asked Questions

土地劣化と砂漠化は同じものですか?

似ていますが、土地劣化の方がより広い概念です。砂漠化は主に乾燥地における土地劣化を指しますが、土地劣化は湿潤地や沿岸部、都市部など、あらゆる環境での生産性低下や機能喪失を含みます。

なぜ不耕起栽培が土地劣化を防ぐのに有効なのですか?

土壌を深く耕さないことで、土壌構造が維持され、風や雨による土壌浸食が大幅に抑えられるためです。慣行的な耕作法に比べて劣化速度を5〜10倍遅らせることができるとされています。

土地劣化は経済にどのような影響を与えますか?

農業収穫量の減少による直接的な損失だけでなく、水ろ過機能の喪失による水インフラコストの増大、生物多様性の喪失による生態系サービスの低下など、多方面で経済的損失を招きます。2050年までに23兆ドルという巨額の損失が予測されています。

個人や社会はどうすれば土地劣化を止められますか?

持続可能な農業産品の選択や、土壌の重要性に関する教育・意識向上への参加が重要です。また、国レベルではSDGsの目標に基づいた持続可能な土地管理(SLM)の導入や、劣化地の復元プロジェクトへの投資が不可欠です。

References

  1. Dagnachew, Melku; Gebrehiwot, Solomon Gebreyohanis; Bewket, Woldeamlak; Alamirew, Tena; Charles, Katrina; Zeleke, Gete (2024). "Ensuring sustainable water security through sustainable land management: Research evidences for policy". World Water Policy. 10 (4): 1170–1186. :2024WWatP..10.1170D. :10.1002/wwp2.12209.  2639-541X. Text was copied from this source, which is available under a Creative Commons Attribution 4.0 International License
  2. FAO (2025). The State of Food and Agriculture 2025. FAO. :10.4060/cd7067en.  .
  3. Le, Quang Bao; Nkonya, Ephraim; Mirzabaev, Alisher (2014). "Biomass Productivity-Based Mapping of Global Land Degradation Hotspots". SSRN Electronic Journal. :10.2139/ssrn.2465799. :10419/106616.  1556-5068.  126829880.
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  6. "Private sector urged to act as world faces $23 trillion loss from land degradation | UN News". news.un.org. 5 December 2024. Retrieved 18 December 2024.
  7. , 2005. Ecosystems and Human Well-being: Desertification Synthesis. World Resources Institute, Washington, DC.
  8. Johnson, D.L., S.H. Ambrose, T.J. Bassett, M.L. Garfield Bowen, D.E. Crummey, J.S. Isaacson, D.N. Johnson, P. Lamb, M. Saul, and A.E. Winter-Nelson. 1997. Meanings of environmental terms. Journal of Environmental Quality 26: 581–589.
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  10. "Artificial intelligence makes restaurants and farms more sustainable". European Investment Bank. Archived from the original on 29 July 2021. Retrieved 29 July 2021.

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Overgrazing by livestock can lead to land degradation.
Estimated annual and average agricultural production losses due to land degradation by income group
Potato field with soil erosion
Human-induced land degradation, 2020.
The rate of global tree cover loss has approximately doubled since 2001, to an annual loss approaching an area the size of Italy.[17]
Soil erosion in a wheat field near Pullman, US
Serious land degradation in Nauru after the depletion of the phosphate cover through mining
List of UN Food and Agriculture Organization recommended responses across land degradation stages from improving land management to full-scale land restoration.