地球の地殻、特に大陸地殻の平均的な組成を代表すると言われる安山岩(Andesite)は、火山岩の中でも「中間的」な性質を持つ岩石です。シリカ(SiO2)含有量が少ない玄武岩と、シリカに富む流紋岩の中間に位置し、その名称は大量に分布するアンデス山脈に由来しています。
安山岩は、主にナトリウムに富む斜長石と、輝石や角閃石などの鉱物で構成されています。組織としては、結晶が非常に細かい「斑晶のない(非晶質に近い)」状態から、大きな結晶が細かい地質の中に点在する「斑状組織」まで多様な形態を示します。
Key Facts
- 化学的定義:シリカ含有量が52%を超え、一般的に57%〜63%の範囲にある火山岩。
- 主要鉱物:斜長石(特に中性斜長石であるアンデシン)が主成分。
- 分布:沈み込み帯や島弧に特有であり、地球を「安山岩惑星」と呼ぶ根拠となる。
- 物理的特性:玄武岩よりも粘性が高く、爆発的な噴火を引き起こしやすい。
- 宇宙での存在:火星の地殻や一部の隕石からも発見されている。
安山岩の科学的分類と識別
安山岩を定義する際、地質学では鉱物組成に基づく「QAPF図」と、化学組成に基づく「TAS分類」の2つの手法が用いられます。QAPF図では、石英が20%未満、フェルシパトイド(長石様鉱物)が10%未満であり、かつ長石の65%以上が斜長石である場合に安山岩の領域に分類されます。

一方で、結晶が細かすぎて顕微鏡での判別が困難な場合は、化学分析によるTAS分類が適用されます。ここではシリカ含有量57%〜63%かつアルカリ金属酸化物が約6%以下の岩石が安山岩(O2領域)と定義されます。なお、シリカ含有量52%〜57%のものは「玄武岩質安山岩」と呼ばれます。

外観は一般的に明るい灰色から暗い灰色を呈します。これは含有される角閃石や輝石の影響によるものです。野外での簡易的な判別法として、色指数(Color Index)が35未満であることが目安とされます。

鉱物組成の詳細
安山岩に含まれる斜長石は、組成によってアノーサイトからオリゴクレーズまで幅がありますが、典型的にはアンデシン(アノーサイト成分が約40 mol%)が多く見られます。また、輝石類(オージャイト、ピジョンナイト、斜方輝石)や角閃石が共存し、副成分として磁鉄鉱、ジルコン、アパタイト、イルメナイト、黒雲母、ガーネットなどが含まれます。

火山活動と溶岩の性質
安山岩質マグマは、玄武岩質マグマに比べてシリカ含有量が高いため、粘性が非常に高いのが特徴です。1,200℃における粘性は約350万cP(ピーナッツバターに近い粘り気)に達します。この高い粘性がガスを閉じ込めるため、噴火は爆発的になりやすく、凝灰岩や集積岩を形成します。
また、玄武岩のような盾状火山ではなく、成層火山(複合火山)を形成する傾向があります。ここから流出する「ブロック溶岩」は、表面が角張った岩塊(ブロック)で覆われ、内部の溶岩がその断熱効果によってゆっくりと移動します。これはアア溶岩に似ていますが、より粘性が高く、流動速度が遅く、厚みが増す傾向にあります。

安山岩が生成されるメカニズム
安山岩は主にプレートの沈み込み帯で生成されます。海洋プレートが沈み込む際、含水鉱物(角閃石やゼオライトなど)から水が放出され、それが上方のマントルウェッジに供給されます。この水がマントルの融点を下げることで部分溶融が起こり、玄武岩質マグマが発生します。
この玄武岩質マグマが、以下のプロセスを経て中間的な組成の安山岩へと変化します。
1. 分化結晶作用(Fractional Crystallization)
マグマが冷却される過程で、融点の高いカンラン石や角閃石などの苦鉄質鉱物が先に結晶化し、沈降して除去されます。これにより、残った液体(残液)中のシリカ濃度が相対的に上昇し、組成が玄武岩から安山岩、さらには流紋岩へと進化します。
2. マグマの混合(Magma Mixing)
地殻内のマグマ溜まりにおいて、分化した酸性マグマ(流紋岩質など)に、深部から高温の玄武岩質マグマが注入され、両者が混ざり合うことで中間的な安山岩組成になります。これは、化学的に不平衡な斑晶が共存していることから証明されています。
3. 地殻の部分溶融とマントルの交代作用
上昇した玄武岩質マグマが地殻底辺で熱を伝え、上部地殻の泥質岩などを部分的に溶かすことで生成される場合があります。また、沈み込むプレートから供給された流体によって変質(交代作用)したマントルが直接溶融し、高マグネシウム安山岩(ボニナイト)が形成されることもあります。

歴史的建造物と宇宙での発見
安山岩はその耐久性から、古くから建築材として利用されてきました。代表的な例として、インドネシアのボロブドゥール寺院やペルーのサクサイワマン要塞、ボリビアの太陽の門、メキシコシティのテンプロ・マヨール遺跡などが挙げられます。


また、地球以外でも安山岩の存在が確認されています。火星の地殻の一部を構成しているほか、南極で発見された一部の隕石からも安山岩が検出されており、地球とは異なるメカニズムで安山岩質地殻が形成された可能性が示唆されています。金星に見られる急峻なドーム状の地形も、安山岩質マグマの噴出によるものと考えられています。
安山岩のまとめ
| 項目 | 詳細内容 |
|---|---|
| 化学組成 | SiO2含有量 52%〜63%(中間的) |
| 主要鉱物 | 斜長石(アンデシン)、輝石、角閃石 |
| 代表的な組織 | 斑状組織(ポルフィリティック) |
| 主な生成環境 | 沈み込み帯、島弧(プレート境界) |
| 溶岩の性質 | 高粘性、爆発的噴火、ブロック溶岩を形成 |
| 対応する深成岩 | 閃緑岩(Diorite) |
Frequently Asked Questions
安山岩と玄武岩の決定的な違いは何ですか?
最も大きな違いはシリカ(SiO2)の含有量です。安山岩は52%以上のシリカを含み、玄武岩よりも粘性が高く、噴火様式が爆発的になる傾向があります。また、色指数が安山岩の方が低い(色が明るい)ことが多いです。
なぜ安山岩は「沈み込み帯」で多く見られるのですか?
沈み込む海洋プレートから放出された水が、上方のマントルの融点を下げるためです。これにより発生した玄武岩質マグマが、地殻を上昇する過程で分化したり、地殻物質と混ざり合ったりすることで、中間的な組成である安山岩が生成されます。
「斑状組織」とはどのような状態を指しますか?
マグマが地下でゆっくり冷えて大きな結晶(斑晶)ができた後、地表に噴出して急冷され、残りの部分が非常に細かい結晶(石基)となった組織のことです。安山岩では斜長石などの大きな結晶がよく見られます。
地球以外に安山岩が存在する天体はありますか?
はい。火星の地殻に含まれていることが分かっているほか、南極で回収された隕石からも発見されています。また、金星の地形的特徴から安山岩の存在が推測されています。
安山岩の深成岩(地下でゆっくり固まった岩石)は何と呼ばれますか?
安山岩の化学組成と同じで、地下深くでゆっくりと冷却・結晶化した岩石は「閃緑岩(せんりょくがん)」と呼ばれます。
References
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