地球の地殻において最も普遍的に存在する鉱物グループの一つが斜長石です。これは単一の鉱物を指すのではなく、ナトリウム(Na)を含む「曹長石」とカルシウム(Ca)を含む「灰長石」という2つの端成分の間で、化学組成が連続的に変化する固溶体(こようたい)シリーズを指します。地質学において、斜長石の組成を分析することは、岩石がどのように形成され、進化したかを知るための重要な手がかりとなります。
Key Facts
- 地殻の主成分: 地球の地殻で最も豊富に存在する鉱物グループであり、月や火星の地殻にも多く含まれる。
- 化学的性質: 曹長石(NaAlSi3O8)から灰長石(CaAl2Si2O8)までの連続的な組成変化を持つ。
- 識別ポイント: 結晶表面に見られる「ポリシンセティック双晶」による縞模様(ストリエーション)が特徴。
- 物理的特性: モース硬度は6〜6.5で、ガラス光沢を持ち、ほぼ直角に近い劈開(へきかい)を示す。
斜長石の構造と物理的特性
斜長石は、三斜晶系に属するテクトケイ酸塩鉱物です。その名称は、ギリシャ語で「斜めの」を意味するplágiosと、「割れ目」を意味するklásisに由来しており、これは2つの劈開面が約93〜94度というわずかに斜めの角度で交わる性質に基づいています。
外観は一般的に白、灰色、または青白色を呈します。不純物が混入することで、稀に黄色や緑色、赤みを帯びることがあります。また、光学的な特徴として、偏光顕微鏡下で観察すると、特有の縞模様であるポリシンセティック双晶が顕著に現れます。

物理的な性質は組成によって緩やかに変化します。例えば、カルシウム含有量が増えるほど比重(2.62〜2.76)や屈折率(1.53〜1.58)が高くなる傾向にあり、これらの数値を精密に測定することで、化学分析を行わずに組成を推定することが可能です。
組成による分類と多様な種類
斜長石シリーズは、灰長石(Anorthite)の含有量(mol%)によって、以下のようにいくつかの名称で区別されます。これらは野外での目視による判別は困難ですが、光学的な分析によって特定されます。
| 名称 | 灰長石成分 (%CaAl2Si2O8) | 曹長石成分 (%NaAlSi3O8) |
|---|---|---|
| 灰長石 (Anorthite) | 90–100 | 0–10 |
| バイトナイト (Bytownite) | 70–90 | 10–30 |
| ラブラドライト (Labradorite) | 50–70 | 30–50 |
| アンデシン (Andesine) | 30–50 | 50–70 |
| オリゴクレース (Oligoclase) | 10–30 | 70–90 |
| 曹長石 (Albite) | 0–10 | 90–100 |
特にラブラドライトは、結晶内部の薄い層による光の回折現象により、虹色に輝く「ラブラドレッセンス」という美しい光学効果を示すことで知られています。

火成岩の形成と結晶化プロセス
マグマが冷却される際、斜長石は最初に結晶化する長石類です。融点が高いカルシウムに富む灰長石がまず析出し、温度が下がるにつれてナトリウムに富む組成へと変化していきます。この連続的な変化はボーエンの反応系列として知られています。

結晶の成長過程では、中心部がカルシウムに富み、外縁部に向かってナトリウム含有量が増える「累帯構造(ゾーニング)」が形成されることが一般的です。また、火山岩の中では、非常に小さな結晶が密集した「マイクロリチック(微晶質)」な組織が見られることもあります。

このような斜長石の組成は、岩石の分類において極めて重要です。QAPF図などの分類体系では、石英やアルカリ長石と共に、岩石の種類(例えば、ガブロやダイオライトなど)を決定する主要な指標として利用されます。

その他の地質学的環境と用途
斜長石は火成岩だけでなく、変成岩や堆積岩にも存在します。変成岩では、変成度に応じて曹長石からアンデシンまで幅広く見られます。一方、堆積岩(砂岩など)においては、化学的風化に弱いため、アルカリ長石よりも分解されやすく、最終的にはスメクタイトなどの粘土鉱物へと変化します。
また、地球の内部構造において、地殻と上部マントルの境界であるモホロビチッチ不連続面は、圧力の上昇により長石類が不安定になり、消失する深さと考えられています。
実用面では、その硬度と耐久性から建設用骨材や建築石材として利用されるほか、粉末状にして塗料やプラスチック、ゴムの充填剤として活用されています。また、ナトリウムに富む種類はガラスやセラミックスの原料としても重要です。
Frequently Asked Questions
斜長石とアルカリ長石の見分け方はありますか?
最も確実な方法は、手本や顕微鏡で「ポリシンセティック双晶」による細い縞模様(ストリエーション)を確認することです。斜長石にはこの縞模様がありますが、アルカリ長石には通常見られません。
ラブラドライトの虹色の輝きは何によるものですか?
これは「ラブラドレッセンス」と呼ばれる現象で、結晶内部に形成された微細な層(ラメラ)が回折格子のように働き、特定の波長の光を反射することで起こります。
なぜ斜長石は「固溶体」と呼ばれるのですか?
結晶構造の中で、ナトリウムイオン(Na⁺)とカルシウムイオン(Ca²⁺)が互いに置き換わりながら、任意の比率で混ざり合うことができるためです。これにより、端成分である曹長石から灰長石まで連続的な組成変化が生じます。
斜長石は地球以外にも存在しますか?
はい。月の高地にある岩石の主成分であるほか、火星の地殻においても最も豊富に存在する鉱物であると考えられています。
ボーエンの反応系列における斜長石の役割は何ですか?
斜長石は「連続系列」を形成し、高温ではカルシウムに富む組成で結晶化し、温度が下がるにつれてナトリウムに富む組成へと変化します。これにより、マグマの冷却履歴を記録する指標となります。
References
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