Enhanced geothermal system: 1 Reservoir, 2 Pump house, 3 Heat exchanger, 4 Turbine hall, 5 Production well, 6 Injection well, 7 Hot water to district heating, 8 Porous sediments, 9 Observation well, 10 Crystalline bedrock
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次世代地熱発電EGS(強化地熱システム)の仕組みと世界的な展開

地球内部に眠る膨大な熱エネルギーを電力に変換する地熱発電ですが、従来の手法では「熱・水・岩盤の浸透性」という3つの条件が揃った場所でしか運用できませんでした。しかし、地球上の多くの高温岩盤は水を含まない「乾いた岩盤」であり、そのままではエネルギーを取り出すことが困難です。この課題を克服し、地熱発電の適用範囲を飛躍的に広げる技術がEGS(Enhanced Geothermal System:強化地熱システムです。

EGSは、人工的に岩盤に亀裂を設け、水を循環させることで、天然の熱水資源がない場所でも地熱エネルギーを抽出することを可能にします。これにより、これまで利用不可能だった広大な地域の熱源をエネルギー源として活用できる道が開かれました。

Geothermal power technologies.

Key Facts

  • EGSの核心: 天然の熱水や浸透性に頼らず、人工的に貯留層を形成して発電する技術。
  • 刺激手法: 水圧破砕(Hydraulic Stimulation)などの手法を用いて岩盤に亀裂を作る。
  • 世界的な展開: 日本、米国、ドイツ、フランス、オーストラリア、スイスなどで研究・開発が進行中。
  • 潜在能力: 米国の地下3〜10kmには、2005年時点の国内一次エネルギー消費量の約14万倍に相当する膨大な資源が眠っていると試算されている。
  • コスト目標: 米国エネルギー省は2035年までに発電コストを45ドル/MWhまで引き下げる目標を掲げている。

EGSの仕組みと技術的アプローチ

EGSの基本コンセプトは、地下深くの高温で緻密な岩盤に人工的な「通り道」を作ることです。具体的には、注入井から高圧の液体を送り込む水圧破砕などの刺激手法を用い、岩盤に微細な亀裂を発生させます。これにより、水が岩盤の間を効率よく流れる「人工貯留層」が構築されます。

構築されたシステムでは、注入された水が高温の岩盤で加熱され、その熱を帯びた水が生産井を通じて地上へ回収されます。回収された熱水は熱交換器を介してタービンを回し、電力を生成します。また、一部のプロジェクトでは、発電後の熱を地域暖房に活用する取り組みも行われています。

Enhanced geothermal system: 1 Reservoir, 2 Pump house, 3 Heat exchanger, 4 Turbine hall, 5 Production well, 6 Injection well, 7 Hot water to district heating, 8 Porous sediments, 9 Observation well, 10 Crystalline bedrock

多様な刺激手法の活用

岩盤の性質に応じて、水圧以外の刺激手法も研究されています。例えば、温度差を利用して岩盤を収縮させる熱刺激や、化学物質を用いて岩盤を溶解させる化学刺激、さらには爆薬を用いる手法などが、世界各地のプロジェクトで試行されてきました。

世界における開発状況と主要プロジェクト

EGSの開発は世界規模で進められており、多くの実証実験が行われています。特にオーストラリアのクーパー盆地では、25メガワットの実証プラントが稼働しており、将来的には5,000〜10,000メガワットの発電ポテンシャルを持つと期待されています。

Map of 64 EGS projects around the world

また、米国では「FORGE」などの大規模な研究プロジェクトや、コーネル大学によるキャンパス内のカーボンニュートラル実現に向けた地熱暖房の導入検討など、学術・産業の両面からアプローチが進んでいます。欧州でもドイツやフランスを中心に、多様な刺激手法を用いた貯留層形成の試みが続いています。

主要国の開発事例まとめ

世界的なEGS開発の傾向
国・地域 主な特徴・取り組み 採用されている主な刺激手法
米国 政府主導のコスト削減目標(Earthshot)や大規模実証(FORGE)を推進 水圧、化学、熱刺激
オーストラリア クーパー盆地での大規模な実証プラント運用 水圧刺激
日本 比企郡(肘折)や八幡平、小ヶ嶽などで早期から研究を実施 水圧、熱刺激
欧州(独・仏・瑞など) 都市部での地熱利用や多様な地質条件での実証実験 水圧、化学、熱刺激
アイスランド 深部掘削プロジェクトを通じた超高温資源の探索 熱刺激

今後の課題と展望

EGSの普及には、いくつかの技術的・経済的ハードルが存在します。まず、深部への掘削コストの削減が不可欠です。また、人工的に岩盤を刺激する際に発生する誘発地震(Induced Seismicity)への対策と管理が、社会的な受容性を高めるための重要な鍵となります。

しかし、米国政府が掲げる「Enhanced Geothermal Shot」のように、コストを劇的に(90%)削減し、安価なベースロード電源として確立できれば、地熱発電は化石燃料に依存しないエネルギー転換の主役となる可能性を秘めています。

Frequently Asked Questions

EGSと従来の地熱発電は何が違うのですか?

従来の地熱発電は、天然に存在する「熱・水・浸透性」のある場所でしか行えませんでしたが、EGSは人工的に岩盤に亀裂を作り、水を循環させることで、水や浸透性のない「乾いた高温岩盤」からもエネルギーを取り出せる点が異なります。

水圧破砕を行うと地震が起きるというのは本当ですか?

高圧で液体を注入して岩盤に亀裂を作る際、微小な地震(誘発地震)が発生することがあります。そのため、多くのプロジェクトでは厳格なモニタリングを行い、安全な運用範囲を特定する研究が進められています。

EGSはどのくらいの規模で発電できる可能性がありますか?

潜在能力は極めて高く、例えば米国では地下3〜10kmの資源量が、2005年時点の国内一次エネルギー消費量の約14万倍に達すると試算されており、技術革新によって抽出可能量はさらに増えると見られています。

EGSのコストを下げようとする取り組みはありますか?

はい。米国エネルギー省は、2035年までに発電コストを1メガワット時あたり45ドルまで引き下げるという野心的な目標(Energy Earthshots)を掲げ、研究開発を加速させています。

発電以外にどのような使い道がありますか?

電力生成だけでなく、抽出した熱を直接利用する地域暖房(ディストリクトヒーティング)への活用が進められています。これにより、都市部の脱炭素化への寄与が期待されています。

References

  1. Lund, John W. (June 2007), "Characteristics, Development and utilization of geothermal resources" (PDF), Geo-Heat Centre Quarterly Bulletin, vol. 28, no. 2, Klamath Falls, Oregon: Oregon Institute of Technology, pp. 1–9,  0276-1084, archived from the original (PDF) on 2010-06-17, retrieved 2009-04-16
  2. Duchane, Dave; Brown, Don (December 2002), "Hot Dry Rock (HDR) Geothermal Energy Research and Development at Fenton Hill, New Mexico" (PDF), Geo-Heat Centre Quarterly Bulletin, vol. 23, no. 4, Klamath Falls, Oregon: Oregon Institute of Technology, pp. 13–19,  0276-1084, archived from the original (PDF) on 2010-06-17, retrieved 2009-05-05
  3. Pierce, Brenda (2010-02-16). "Geothermal Energy Resources" (PDF). National Association of Regulatory Utility Commissioners (NARUC). Archived from the original (PowerPoint) on 2011-10-06. Retrieved 2011-03-19.
  4. Cichon, Meg (2013-07-16). "Is Fracking for Enhanced Geothermal Systems the Same as Fracking for Natural Gas?". RenewableEnergyWorld.com. Archived from the original on 2014-05-08. Retrieved 2014-05-07.
  5. US Department of Energy Energy Efficiency and Renewable Energy. "How an Enhanced Geothermal System Works". Archived from the original on 2013-05-20.
  6. "20 slide presentation inc geothermal maps of Australia" (PDF).[]
  7. "Superhot Rock Energy: A Vision for Firm, Global Zero-Carbon Energy". Clean Air Task Force. October 2022.
  8. Tester, Jefferson W. (); et al. (2006). The Future of Geothermal Energy – Impact of Enhanced Geothermal Systems (EGS) on the United States in the 21st Century (PDF). Idaho Falls: Idaho National Laboratory.  . Archived from the original (14MB PDF) on 2011-03-10. Retrieved 2007-02-07.
  9. Pollack, Ahinoam (2020). "Gallery of 1D, 2D, and 3D maps from enhanced geothermal systems around the world".
  10. Pollack, Ahinoam (2020). "What Are the Challenges in Developing Enhanced Geothermal Systems (EGS)? Observations from 64EGS Sites" (PDF). World Geothermal Congress.  211051245. Archived from the original (PDF) on 2020-07-13.

📸 フォトギャラリー

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