Lava delta of Ponta dos Biscoitos, Sant Cruz das Ribeiras, Pico Island
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溶岩デルタの形成メカニズムと火山島における地学的リスク

河川が運ぶ土砂によって形成されるデルタ(三角州)と同様に、火山活動においても水辺に新たな陸地が形成される現象があります。それが溶岩デルタです。これは、地表を流れる溶岩が海などの静止した水域に流れ込んだ際に形成される特有の地形であり、主に玄武岩質の流動性の高い溶岩流によって作り出されます。

溶岩デルタは、単なる地形的な特徴にとどまらず、火山島の面積を拡大させる重要な役割を担っています。しかし、その形成過程は非常にダイナミックであり、同時に深刻な危険性を孕んでいます。

Key Facts

  • 溶岩デルタは、溶岩が水に触れて急冷・破砕されることで海底に堆積し、次第に海面上へと成長する。
  • 主にホットスポットなどの玄武岩質火山で見られ、低粘性のパホイホイ溶岩が主成分となることが多い。
  • 形成された平坦な地形で「溶岩ベンチ」と呼ばれる構造ができ、これが島を拡張させる。
  • 未固結な構造のため、突然の崩落や激しい蒸気爆発が発生するリスクがある。
  • 過去の溶岩デルタは、急峻な火山島において貴重な平地となり、集落の建設地に利用される。

溶岩デルタが形成される仕組み

溶岩が海に到達すると、急激な温度低下による冷却と、水との接触による激しい蒸気爆発が同時に起こります。このプロセスで溶岩は細かく砕かれ、ハイアロクラスタイト(急冷されてガラス質となった火山砕屑物)と呼ばれる破片に変化します。

これらの破片が海底に降り積もることで、次第に海底の地形が埋め立てられていきます。堆積が進み、溶岩流がさらに沖合まで地表を流れて進めるようになると、水平な平坦面を持つ溶岩ベンチが形成されます。このサイクルが繰り返されることで、陸地が海側へと前進していくのです。

USGS cartoon of lava delta formation

多くの場合、この現象は粘性の低いパホイホイ溶岩によって引き起こされます。溶岩は小さな溶岩チューブ(溶岩が流れる管状の通路)を通じて海へ運ばれ、海面からは激しい水蒸気の柱が立ち上がる様子が観察されます。

Aerial view of Kamoamoa lava delta forming, Kilauea

大規模な事例と分布

溶岩デルタは主にホットスポット上の火山島で多く見られます。例えば、ハワイ諸島のビッグアイランドは、現在もこの溶岩ベンチの形成によって島が拡大し続けています。

Lava delta of Ponta dos Biscoitos, Sant Cruz das Ribeiras, Pico Island

また、歴史的な地質学的スケールでは、北大西洋の火成岩省(North Atlantic Igneous Province)において、極めて大規模なシステムが確認されています。古新世後期の北大西洋分裂直前に発生した大規模噴火により、フェロー諸島からモーレ縁辺部やヴォリング縁辺部にかけて、合計約1,000kmに及ぶ巨大な溶岩断崖(デルタと解釈される)が形成されました。これらのデルタは、水深が比較的一定であったため、噴火口から最大25kmも沖合まで広がったと考えられています。

潜在的な危険性とハザード

溶岩デルタの形成過程は非常に不安定です。特に、新しく形成された溶岩ベンチが堆積物の上に載っている場合、その構造は極めて脆弱です。十分な安定性を得る前に、ベンチの先端部分が突然海へ崩落することが頻繁にあります。

この崩落が起きると、内部に閉じ込められていた高温の溶岩が大量に海水と接触し、猛烈な蒸気爆発を引き起こします。この際、巨大な岩石や溶融した溶岩が内陸へ最大90メートルも吹き飛ばされることがあり、極めて危険です。

さらに、海水と溶岩の反応によってlaze(レイズ)と呼ばれる酸性の蒸気雲が発生します。これは呼吸器に悪影響を及ぼすため、活動中のデルタ付近に近づくことは厳禁とされています。崩落は前触れなく起こるため、溶岩ベンチの上を歩くことは非常にリスクが高く、十分な距離を保つことが推奨されます。

人間社会への影響と利用

危険な形成過程を経て安定した古い溶岩デルタは、急峻な地形が多い火山島において、貴重な平坦地として利用されます。そのため、歴史的に多くの村落や町がこれらの土地に建設されてきました。スペインのテネリフェ島にあるガラチコのような町は、過去の噴火で形成された溶岩デルタの上に築かれた代表的な例です。

The town of Garachico, Tenerife, built on a lava delta formed during the 1706 eruption

溶岩デルタの特性まとめ

溶岩デルタの形成と特徴
項目 詳細
主な構成物質 玄武岩質溶岩、ハイアロクラスタイト(ガラス質破片)
形成条件 低粘性溶岩(パホイホイ等)が水域に流入すること
代表的な地形 溶岩ベンチ(水平な平坦面)
主なリスク 構造的崩落、蒸気爆発、酸性雲(laze)の発生
地理的利点 火山島における平坦な居住地の提供

Frequently Asked Questions

溶岩デルタと普通の河川デルタは何が違いますか?

河川デルタは水流によって運ばれた土砂や泥が堆積してできますが、溶岩デルタは溶岩が水で急冷されて砕けた破片(ハイアロクラスタイト)が海底に積もることで形成されます。

なぜ溶岩ベンチの上を歩くのは危険なのですか?

新しくできた溶岩ベンチは構造的に非常に不安定で、特に下層に堆積物がある場合は突然崩落する恐れがあるためです。崩落に伴い激しい蒸気爆発が起こる可能性もあり、非常に危険です。

「laze」とは何ですか?

溶岩が海水と接触した際に発生する、水蒸気と塩酸などの酸性物質を含む化学的な雲のことです。吸い込むと有害であるため、注意が必要です。

溶岩デルタはどのような火山でよく見られますか?

主にホットスポットなどの、流動性の高い玄武岩質溶岩を大量に噴出する火山島でよく見られます。ハワイの火山などが典型的な例です。

溶岩デルタが町として利用されるのはなぜですか?

火山島は一般的に斜面が急で平地が少ないため、溶岩デルタによって形成された平坦な土地が、建築や居住に適した貴重な場所となるからです。

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📸 フォトギャラリー

Lava delta of Ponta dos Biscoitos, Sant Cruz das Ribeiras, Pico Island
Aerial view of Kamoamoa lava delta forming, Kilauea
USGS cartoon of lava delta formation
The town of Garachico, Tenerife, built on a lava delta formed during the 1706 eruption