地球内部から上昇したマグマが冷却される過程で、特定の鉱物が結晶化し、それが重力によって沈降したり、あるいは浮上したりして集積することで形成される火成岩を累積岩(キュムレート岩)と呼びます。これらの岩石は、その形成過程を物語る独特の組織を持っており、地質学的な環境を解明するための重要な手がかりとなります。
累積岩は、異なる組成や色の層が積み重なることで、視覚的に顕著な縞模様や層状構造を呈することが多くあります。これは、マグマの組成が時間とともに変化し、異なる種類の鉱物が順次蓄積されるためです。

Key Facts
- 形成原理:マグマから結晶化した鉱物が、密度差によって沈降または浮上し蓄積して形成される。
- 分布:主に超塩基性貫入岩や、コマタイアイトなどの溶岩チューブの底部、一部の花崗岩質貫入岩に見られる。
- 分類:結晶の含有率に基づき、アドキュムレート、メゾキュムレート、オルトキュムレートに分けられる。
- 経済的価値:クロム、ニッケル、白金族元素(PGE)などの重要な金属資源の供給源となる。
累積岩の形成プロセスとメカニズム
累積岩は主に、分晶作用(マグマから特定の鉱物が結晶として分離し、残りの液体の組成が変化する現象)が起こるマグマ溜まりの中で生成されます。一般的には、密度が高い鉱物が溜まりの底に沈殿しますが、アノーサイト(斜長石の一種)のように密度の低い鉱物が形成された場合は、マグマの天井部分に浮上して蓄積することもあります。

結晶の蓄積と層状構造
累積岩の最大の特徴は、その層状の形態にあります。例えば、オマーンのガブロ(斑れい岩)に見られるような明瞭な層状構造は、結晶化のタイミングによって異なる鉱物が積み重なった結果です。

また、南アフリカのブッシュフェルト複合体では、クロムに富む暗色の層と、斜長石に富む明色の層が交互に現れる非常にダイナミックな構造が観察されます。

分類と命名法
累積岩は、主となる鉱物種と、岩石全体に占める結晶の割合(地質学的な「基質」に対する比率)によって定義されます。結晶の含有量に応じた分類は以下の通りです。
| 分類名 | 結晶の含有率(目安) | 特徴 |
|---|---|---|
| アドキュムレート (Adcumulate) | 約93% ~ 100% | 基質が極めて少なく、ほぼ結晶のみで構成される。 |
| メゾキュムレート (Mesocumulate) | 85% ~ 93% | 中程度の基質を含む。 |
| オルトキュムレート (Orthocumulate) | 75% ~ 85% | 比較的多くの基質が結晶間に存在する。 |
命名の際は、「主要鉱物名 + 累積タイプ + 副成分鉱物」の順で記述します。例えば、斜長石50%、輝石40%、かんらん石5%、基質5%の岩石は「斜長石-輝石アドキュムレート(副成分:かんらん石)」と呼ばれます。
地球化学的特性と解析の困難さ
累積岩の化学組成は、元のマグマの組成をそのまま反映しているわけではありません。結晶化した鉱物が特定の元素を取り除くため、残された液体(残液)の組成は常に変化します。
例えば、玄武岩質マグマからアノーサイト(カルシウム・アルミニウムに富む斜長石)とエンスタタイト(輝石)が結晶化すると、マグマ中のカルシウムとマグネシウムが消費されます。その結果、残液にはナトリウム、カリウム、チタン、鉄などが濃縮され、よりフェルシック(珪長質)な組成へと進化します。
グリーンランドのスケアガルド貫入岩体では、底部から上部にかけて、斜長石のカルシウム含有量(An値)や、かんらん石のマグネシウム含有量(Fo値)が段階的に減少していることが確認されており、単一のマグマ溜まりで分化が進んだ典型例とされています。
組成推定における課題
元のマグマ組成を推定するには、基質の化学分析や複雑な平均化計算が必要ですが、現実には困難が伴います。特に大規模な貫入岩体では、周囲の壁岩がマグマに溶け込む「同化作用」や、新しいマグマの注入、あるいは一部のマグマが流出するといった要因が加わるため、単純な計算では不十分な場合が多いのが現状です。
経済的重要性と鉱床
累積岩は、産業的に極めて重要な金属資源の宝庫です。主に以下の3つのカテゴリーに分けられます。
- 珪酸塩鉱物累積岩:一般に価値は低いですが、純度の高いアノーサイトはガラス製造や半導体、化粧品などの原料として採掘されます。
- 酸化物鉱物累積岩:分晶作用が進み、鉄、チタン、クロムが濃縮されると、スピネル構造を持つ酸化物鉱物が結晶化します。これにより、クロミタイト(クロム鉄鉱)などの層状鉱床が形成されます。
- 硫化物分離体:マグマが硫和飽和状態になると、珪酸塩マグマとは混じり合わない「硫化物液体」が分離します。この液体は密度が高いため底に溜まり、ニッケル、銅、白金族元素(PGE)、コバルトなどの高価な金属を濃縮させます。
Frequently Asked Questions
累積岩はどのようにして層状構造になりますか?
マグマが冷却される際、結晶化する鉱物の種類やタイミングが時間とともに変化します。先にできた重い鉱物が底に沈み、その上に次に結晶化した異なる組成の鉱物が積み重なることで、縞模様のような層状構造が形成されます。
累積岩の組成から元のマグマの組成を直接知ることはできますか?
いいえ、困難です。累積岩は特定の元素が濃縮された「分画物」であるため、その組成は元のマグマとは異なります。元の組成を推定するには、残液の分析や複雑な地球化学的計算、相図を用いた検証が必要です。
「アドキュムレート」と「オルトキュムレート」の違いは何ですか?
主な違いは、結晶の隙間を埋めている「基質(groundmass)」の量です。アドキュムレートは結晶がほぼ100%近くを占める非常に純度の高い累積岩であり、オルトキュムレートは基質の割合が比較的多く(15〜25%程度)、結晶の隙間に元のマグマの成分がより多く残っている状態を指します。
なぜ累積岩に貴重な金属が集まるのですか?
多くの貴金属(ニッケルや白金など)は「親硫性」という性質を持っており、マグマ中に硫化物が現れると優先的に取り込まれます。これらの硫化物液体は非常に密度が高いため、重力によって岩体の底部に集積し、高濃度の鉱床を形成するためです。
References
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