Scheme of changes in lung volumes in restricted and obstructed lung in comparison with healthy lung.
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肺活量と肺容量の基礎知識呼吸機能のメカニズムと測定指標

私たちが無意識に行っている「呼吸」ですが、肺の中では複雑な空気の出入りが行われています。肺が一度にどれだけの空気を取り込めるか、あるいは吐き出した後にどれだけの空気が残るかといった指標は、健康状態や身体能力を測る重要なバロメーターとなります。本記事では、呼吸生理学における肺容量の定義から、個人の特性や疾患による変動までを詳しく解説します。

Key Facts

  • 成人男性の平均全肺気量は約6リットルである。
  • 呼吸数は出生時の分間30〜60回から、成人では12〜20回へと減少する。
  • 肺容量の変動要因には、身長、居住地の標高、体力、肥満度などが含まれる。
  • 妊娠中は子宮による横隔膜の圧迫で機能的残気量が18〜20%減少する。
  • 肺疾患の分類は、FEV1/FVC比などの指標を用いて「拘束性」と「閉塞性」に区別される。

肺容量と肺気量の定義

呼吸サイクルにおける空気の量は、単一の「容量(Volume)」と、複数の容量を組み合わせた「気量(Capacity)」に分けられます。まず、基本となるのが一回換気量(TV/VT)で、これは安静時の通常の呼吸で出入りする空気の量です。

さらに、深く吸い込んだ状態からさらに吸い込める最大量を予備吸気量(IRV)、逆に息を吐き切った状態からさらに吐き出せる最大量を予備呼気量(ERV)と呼びます。これらの一回換気量、予備吸気量、予備呼気量を合わせたものが、一般的に知られる肺活量(VC)です。

一方で、最大限に息を吐き出した後でも肺の中に残っている空気を残気量(RV)と言います。この残気量があるため、肺が完全に潰れることはありません。肺にあるすべての空気の合計である全肺気量(TLC)は、肺活量と残気量の和で算出されます。

また、通常の呼吸で息を吐いた直後の状態の空気量を機能的残気量(FRC)と呼び、これは予備呼気量と残気量の合計に相当します。

肺機能に影響を与える要因

肺の容量はすべての人で同じではなく、身体的特徴や環境によって大きく異なります。一般的に、身長が高い人や、酸素分圧が低い高地に住む人は、より大きな肺容量を持つ傾向があります。これは、高地では酸素を取り込む効率を高めるために身体が適応し、拡散能が向上したり、吸気時に横隔膜がより大きく下降したりするためです。

逆に、低地に住む人が急に高地へ移動すると、二酸化炭素の排出はできても十分な酸素を取り込めず、「高山病」を引き起こすことがあります。また、肥満や大気汚染への曝露も肺機能に悪影響を及ぼします。特に道路沿いで育った子供や、喘息患者、あるいは健康な成人であっても低濃度の汚染物質にさらされると、強制呼気量(FEV1)や肺活量(FVC)が低下することが報告されています。

生理的な変化として顕著なのが妊娠期です。胎児が成長し子宮が横隔膜を圧迫するため、機能的残気量は約18〜20%(1.7Lから1.35Lへ)減少します。しかし、身体全体の酸素需要が増えるため、一回換気量は30〜40%増加し、結果として肺全体の換気量は維持または向上します。

肺機能の測定と評価指標

肺機能の評価には、スパイロメトリーという検査が用いられます。これにより、肺活量や一回換気量、予備呼気量などを直接測定できます。ただし、残気量は物理的にすべて吐き出すことができないため、ヘリウム希釈法やボディプレチスモグラフィ(体積置換法)などの間接的な手法で測定されます。

臨床的に重要な指標の一つに、努力性肺活量(FVC)と、その最初の1秒間に吐き出された量である1秒量(FEV1)があります。この2つの比率(FEV1/FVC)を見ることで、肺疾患の種類を判別することが可能です。

肺疾患のタイプ別特徴
疾患タイプ 代表例 特徴 FEV1/FVC
拘束性疾患 肺線維症、気胸、呼吸筋弱化 肺容量全体が減少する 概ね正常(0.8〜1.0)
閉塞性疾患 喘息、COPD、肺気腫 容量は正常に近いが、空気の流れが妨げられる 低下(0.45〜0.78程度)

このように、単に「空気がたくさん入るか」だけでなく、「どれだけの速さで吐き出せるか」というフロー(流量)の視点が診断において不可欠です。

Scheme of changes in lung volumes in restricted and obstructed lung in comparison with healthy lung.

呼吸の「重さ」と個体差

興味深い視点として、呼吸する空気の「質量」があります。空気1リットルの重さは約1.2gです。したがって、成人男性の平均的な一回換気量(0.5L)は約0.6gであり、最大肺活量(4.8L)で呼吸した場合は約5.8gの空気が移動している計算になります。

また、肺容量には極めて大きな個体差が存在します。例えば、オリンピック金メダリストのボート選手や水泳選手の中には、肺活量が11〜12リットルに達するという驚異的な記録を持つ人物も存在します。

Frequently Asked Questions

残気量とは何ですか?なぜ重要なのでしょうか?

残気量(RV)とは、最大限に息を吐き出した後でも肺の中に残っている空気の量のことです。これにより、呼吸の合間でも肺が完全に虚脱(潰れること)するのを防ぎ、絶えずガス交換が行われる状態を維持しています。

高地に住むと肺活量が増えるのはなぜですか?

高地は気圧が低く酸素分圧も低いため、身体がより多くの酸素を取り込もうと適応するためです。具体的には、吸気時に横隔膜がより深く下がる傾向があり、結果として肺容量が増加します。

拘束性疾患と閉塞性疾患の違いは何ですか?

拘束性疾患は、肺が硬くなったり胸郭が制限されたりして「肺に空気が十分に入らない(容量の減少)」状態です。一方、閉塞性疾患は、気道が狭くなることで「空気は入るがスムーズに吐き出せない(流量の低下)」状態を指します。

妊娠中に呼吸が苦しくなるのは肺活量が減るからですか?

はい、その要因の一つです。成長した子宮が横隔膜を押し上げるため、機能的残気量や全肺気量が減少します。ただし、身体は一回換気量を増やすことで、増加した酸素需要を補う仕組みを持っています。

スパイロメトリーで測定できないものはありますか?

残気量(RV)は直接的に吐き出して測定することができないため、スパイロメトリーだけでは測定不可能です。これを測定するには、ガス希釈法や体積置換法などの特殊な間接的手法が必要となります。

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