自動車の電気システムにおいて、ヒューズは配線や電子機器を過電流から守る極めて重要な安全装置です。万が一、回路に許容範囲を超える電流が流れた際、ヒューズ自らが溶断することで回路を遮断し、車両火災や高価な部品の破損を防ぎます。
一般的に、自動車用ヒューズは32Vまでの直流(DC)回路向けに設計されていますが、一部の特殊なシステムでは42V対応の製品も使用されます。これらのヒューズは通常、エンジンルーム内やステアリング付近のダッシュボード下にある「ヒューズボックス(統合電源モジュール:IPM)」にまとめられて配置されています。ただし、エアバッグコントローラーやキャビンファンなど、特定の部品の近くに個別に設置されている場合もあります。
また、スイッチ操作で復旧可能なサーキットブレーカー(回路遮断器)が採用されている箇所もあり、利便性が高められています。

Key Facts
- 主目的: 過電流による車両配線の焼損や電気機器の故障を防止すること。
- 設置場所: 主にエンジンルーム内や運転席付近のヒューズボックスに集約。
- 電圧規格: 基本的に32V DCまで(一部42V対応あり)。
- IODヒューズ: イグニッションオフ時の暗電流を制御し、長期駐車時のバッテリー上がりを防ぐ専用ヒューズが存在する。
- 識別方法: 多くのブレードヒューズは、定格電流値に応じてボディの色で区別されている。
主流の「ブレードタイプ」ヒューズ
現代の自動車で最も広く普及しているのが、プラスチック製のボディに2本の端子(プラグ)が付いたブレードヒューズ(スパードヒューズとも呼ばれる)です。その構造から、ボートやキャンピングカーなどの低電圧DCシステムにも転用されています。
ブレードヒューズは、物理的なサイズによって6つのグループに分類されており、それぞれの頂部には定格電流(アンペア数)が印字されています。

サイズ展開と特徴
サイズは、小型のMicro2やMicro3から、大電流用のMaxiまで多岐にわたります。1976年に登場したRegular(標準)サイズは、ISO 8820-3やSAE J1284などの国際規格に準拠しており、現在も多くの車両で使用されています。また、1990年代には省スペース化のためにMiniサイズが開発されました。

これらのヒューズは、専用のヒューズブロック(磁器や耐火素材製)のほか、インラインホルダーやクリップを用いて固定されます。十分なスペースがある場合は、ブレードヒューズの代わりに小型のサーキットブレーカーを装着させることも可能です。

ブレードヒューズの規格一覧
| サイズ名 | グループ名 | 寸法 (L×W×H mm) | 主な定格電流 (A) |
|---|---|---|---|
| Micro2 | APT, ATR | 9.1 × 3.8 × 15.3 | 5 ~ 30 |
| Micro3 | ATL | 14.4 × 4.2 × 18.1 | 5 ~ 15 |
| LP-Mini | APS, ATT | 10.9 × 3.81 × 8.73 | 2 ~ 30 |
| Mini | APM, ATM | 10.9 × 3.6 × 16.3 | 2 ~ 30 |
| Regular | APR, ATC, ATO, ATS | 19.1 × 5.1 × 18.5 | 0.5 ~ 40 |
| Maxi | APX | 29.2 × 8.5 × 34.3 | 20 ~ 120 |
旧車や特殊用途で使われるヒューズ形式
ボッシュタイプとルーカスタイプ
欧州の旧車によく見られるのが、円筒形で両端が円錐状になったボッシュタイプ(セラミック/ポーセリンヒューズ)です。サイズは6×25mmで、DIN 72581/1規格に基づいています。


一方、英国車に採用されていたルーカスタイプは、セラミック製(円錐端)とガラス管製(直線端)があります。ルーカス製は「連続電流」「瞬時溶断電流」「連続溶断電流」という3つの指標を持っており、表記されている数値がシステム推奨値の2倍である場合があるため、交換時には注意が必要です。
ガラス管タイプ(SFEなど)
1981年頃までの北米車では、円筒形のガラス管ヒューズが主流でした。特にSFEヒューズは、誤って不適切な容量のヒューズを挿入することを防ぐため、定格電流に応じて長さが異なる設計になっています。

注意点として、外見が酷似した「AGシリーズ」のヒューズが存在します。AGシリーズは主に125V/250Vの交流(AC)用であり、32Vまでの自動車用SFEヒューズとは電圧定格が根本的に異なるため、混用は厳禁です。
その他の特殊な保護デバイス
リミッター(ヒューズリンク)
10Aを超える高電流回路では、金属帯を用いたリミッター(またはヒューズリンク)が使用されます。これは内部素子が溶けることで抵抗値を急激に高め、電流の大きさと持続時間を抑制する仕組みです。主にバッテリー付近や、フォークリフトなどの電気車両に採用されています。
インジケーター付きヒューズ
メンテナンス性を向上させるため、内部のリンクが溶断した際にランプが点灯し、どのヒューズが切れたかを一目で判別できる製品も提供されています。
Frequently Asked Questions
ヒューズが切れた際、より高いアンペア数のものに交換してもいいですか?
絶対に避けてください。定格以上のヒューズを使用すると、配線が耐えられない電流が流れた際にヒューズが切れず、電線が過熱して車両火災の原因となる危険があります。必ず車両指定の定格容量を使用してください。
ブレードヒューズの色で電流値は判断できますか?
はい、多くのメーカーで共通の色分けが採用されています。例えば、赤は10A、青は15A、黄色は20Aといった具合です。ただし、Maxiサイズなど一部の規格では色が異なる場合があるため、必ず本体の印字を確認してください。
SFEヒューズとAGヒューズの違いは何ですか?
最大の違いは耐電圧です。SFEヒューズは自動車用の低電圧(32Vまで)設計ですが、AGヒューズは家庭用などの高電圧(125V/250V AC)向けに設計されています。用途が異なるため、互換はありません。
IODヒューズを抜くとどのようなメリットがありますか?
IOD(Ignition Off Draw)ヒューズは、エンジン停止中の待機電力を制御しています。数週間以上の長期駐車時にこのヒューズを抜いておくことで、メモリ保持などの微量な電力消費を抑え、バッテリーの完全放電を防ぐことができます。
サーキットブレーカーとヒューズの最大の違いは何ですか?
ヒューズは一度溶断すると交換が必要な「使い捨て」ですが、サーキットブレーカーはスイッチなどでリセットして再利用できる点が異なります。どちらも過電流保護という目的は同じです。
References
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- Aftermarket Glass Fuses
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