A map of the states and provinces affected. Not all areas within the political boundaries were blacked out.
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1965年北東部大停電北米を震撼させた電力網崩壊の全貌

1965年11月9日の火曜日、北米の北東部を襲った大規模な停電は、現代の電力インフラにおける脆弱性を浮き彫りにした歴史的な出来事でした。カナダのオンタリオ州から、アメリカのニューヨーク州、コネチカット州、ペンシルベニア州など計10州にわたる広大な地域で電力が喪失し、3,000万人以上の人々が突然の暗闇に包まれました。

この事象は単なる局所的な故障ではなく、相互に接続された電力ネットワークが連鎖的に崩壊する「カスケード故障」の典型例となりました。最大13時間に及んだこの混乱は、当時の社会に大きな衝撃を与え、後の電力監視システムの発展に決定的な影響を及ぼしました。

Key Facts

  • 発生日時: 1965年11月9日 午後5時16分(東部標準時)
  • 影響範囲: カナダ・オンタリオ州および米国北東部10州(約207,000平方キロメートル)
  • 影響人数: 3,000万人以上
  • 主な原因: オンタリオ州の送電線における保護リレーの設定ミス
  • 特筆事項: ニューヨーク市では約80万人が地下鉄に閉じ込められたが、略奪などの犯罪は極めて少なかった

停電を引き起こしたメカニズム:一つの設定ミスから連鎖へ

大停電の引き金となったのは、カナダ・オンタリオ州のクイーンストンにあるサー・アダム・ベック水力発電所第2号機の保護リレー(異常を検知して回路を遮断する安全装置)の設定ミスでした。11月の寒い夜、暖房や照明への需要がピークに達していたため、送電線には極めて高い負荷がかかっていました。

午後5時16分、ニューヨーク州ルウィストンのロバート・モーゼス発電所から発生したわずかな電力変動が、誤設定されていたリレーを作動させました。これにより主要な送電線が遮断されると、その負荷が瞬時に他の回線へと転移し、次々と過負荷による遮断が発生。結果として、ベック発電所はオンタリオ州南部から完全に切り離されました。

行き場を失った過剰な電力は東側のニューヨーク州へと流れ込み、そこでも同様の連鎖的な遮断を引き起こしました。わずか5分ほどの間に、電力網はバラバラの「アイランド(孤立状態)」に分断され、各地の発電所が負荷の不均衡によって自動停止に追い込まれました。

A map of the states and provinces affected. Not all areas within the political boundaries were blacked out.

混乱の最中の光景と異例の現象

周波数の低下がもたらした「スロー再生」

停電の直前、ニューヨーク市のラジオ局WABCでは奇妙な現象が起きていました。当時の音楽再生機器は、商用電源の周波数(通常60Hz)に同期して回転するモーターを使用していたため、電力網の不安定化に伴い周波数が低下すると、曲のテンポが遅くなるという事態が発生しました。

DJのダン・イングラムは、放送中のレコードやジングルが明らかにゆっくりと流れていることに気づき、「電気がゆっくり流れている」と冗談を交えて伝えましたが、その後すぐに放送は途絶えました。記録によれば、停電の6分前には56Hz、2分前には51Hzまで周波数が低下していたことが分かっています。

都市の反応と救いとなった自然の光

ニューヨーク市では午後5時27分頃にマンハッタンやブロンクス、クイーンズなどで消灯が始まりました。幸いなことに、この日は雲ひとつない空に明るい満月が出ていたため、街に降りた人々にとって貴重な光源となりました。

また、電話交換機は非常用発電機で動作していたため、多くの電話回線は維持されました。しかし、一部の医療機関では発電機が作動せず、外科医が懐中電灯を頼りに手術を続行するという危機的な状況も発生しました。

A poster placed in the New York City Subway thanking riders for staying on their best behavior during the blackout. It states "When the lights went out you were at your brightest."

復旧への道のりと教訓

電力の復旧は地域によって差がありました。発電所の再起動には、ポンプや制御システムを動かすための電力(ブラックスタート)が必要ですが、ロチェスターにあるジェネシー川の水力発電所が稼働し続けていたことが、周辺地域の復旧を早める鍵となりました。ニューヨーク市全体が完全に復旧したのは、翌11月10日の午前7時頃でした。

この事件を受けて、電力業界は電圧や電流の監視体制が不十分であったことを痛感しました。その後、電力研究機構(EPRI)などの協力により、現代の電力管理の基盤となるSCADA(監視制御およびデータ収集システム)などの高度なモニタリング技術が開発されることとなりました。

項目 詳細
発生原因 保護リレーの設定ミスによる連鎖的な過負荷遮断
影響地域 カナダ・オンタリオ州、米国北東部10州
社会的影響 3,000万人以上の停電、地下鉄での足止め(約80万人)
技術的成果 SCADAシステムの導入など、電力監視体制の近代化
特筆すべき点 犯罪率の極端な低さと、満月による視界の確保

Frequently Asked Questions

なぜ一部の地域では停電しなかったのですか?

独自の発電所を持ち、停電発生時に迅速に広域グリッドから切り離して自立運転に切り替えた自治体や施設(コネチカット州ハートフォードなど)は、電力を維持することができました。

地下鉄に閉じ込められた人々はどうなったのでしょうか?

ニューヨーク市では約80万人が地下鉄に閉じ込められるという大混乱となりましたが、乗客の振る舞いは非常に理性的であり、大きなトラブルなく対処されました。

この停電後にベビーブームが起きたというのは本当ですか?

停電の9ヶ月後に出生率が上がったという説がありますが、これらは根拠のない噂であるとされており、実証されていません。

当時のラジオ放送で音楽が遅くなったのはなぜですか?

当時のレコードプレーヤーなどの機器は、電源周波数(60Hz)に依存して回転していたため、電力網の負荷増大で周波数が低下したことで、物理的に回転速度が落ちたためです。

この事件が現代の電力システムに与えた影響は?

リアルタイムでの電圧・電流監視の重要性が認識され、現在の電力網を支えるSCADAのような高度な監視・制御システムの開発へとつながりました。

References

  1. (December 17, 1985). "The Trigger Effect". . Series 1. Episode 1. Event occurs at 15:30. BBC. Over an area of 80 million square miles, 30 million people were now in darkness.
  2. Report of The Northeast Power co-ordinating Council (NPCC)
  3. Buffalo Evening News, November 10, 1965
  4. "MP3 of the broadcast as the blackout happened". WABC (AM) Music Radio 77. November 9, 1965. Retrieved December 3, 2010.
  5. "Hear WABC DJ in NYC Talk Live On Air During Famous 1965 Northeast Blackout". That Eric Alper. October 16, 2015. Retrieved October 17, 2015.
  6. "Our History | Peabody Municipal Light Plant, MA".
  7. "Providing Blackout Lights". Time Magazine. December 10, 1965.
  8. Khiss, Peter (November 10, 1965). "Snarl at Rush Hour Spreads Into 9 States | 10,000 in the National Guard and 5,000 Off-Duty Policement Are Called to Service in New York". .  0362-4331. Retrieved February 2, 2021 – via . The largest power failure in history blacked out nearly all of New York City, parts of nine Northeastern states and two provinces of southeastern Canada last night. Some 80,000 square miles, in which perhaps 25 million people live and work, were affected. ... The light and power went out first at 5:17 P.M. somewhere along the Niagara frontier of New York State. ... The tripping of automatic switches hurtled the blackout eastward across the state—to Buffalo, Rochester, Syracuse, Utica, Schenectady, Troy and Albany. ... At 5:27 p.m., the lights began sputtering in New York City, and within seconds, the giant Consolidated Edison system blacked out in Manhattan, the Bronx, Queens, and most of Brooklyn –but not in Staten Island and parts of Brooklyn that were interconnected with the Public Service Electric and Gas Company of New Jersey.
  9. "* Full moon calendar 1965".
  10. "Mount Weather / High Point Special Facility (SF) / Western Virginia Office of Controlled Conflict Operations - United States Nuclear Forces". fas.org. Retrieved August 27, 2016.

📸 フォトギャラリー

A map of the states and provinces affected. Not all areas within the political boundaries were blacked out.
A poster placed in the New York City Subway thanking riders for staying on their best behavior during the blackout. It states "When the lights went out you were at your brightest."