170年以上の歴史を持つBausch + Lomb(バッシュアンドローム)は、コンタクトレンズや眼科用医薬品、手術用器具などの分野で世界をリードするカナダのヘルスケア企業です。かつては米国で最も長く継続して運営されていた企業の一つであり、その技術革新は現代の視覚ケアのあり方を根本から変えてきました。
Key Facts
- 創業: 1853年、米国ニューヨーク州ロチェスターにて設立
- 主要製品: コンタクトレンズ、ケア用品、眼科用医薬品、眼科手術用器具
- グローバル展開: 約100カ国で製品の製造・販売を展開
- 最新の業績: 2022年度の売上高は37.7億米ドル、従業員数は約12,900名
- 現在の拠点: カナダ・オンタリオ州ヴォーンに本社を置く
創業から光学機器の先駆者へ
同社の歴史は、ドイツからの移民である光学職人のジョン・バッシュと、資金提供者となった家具職人のヘンリー・ロムによる小さなワークショップから始まりました。当初はモノクル(片眼鏡)の製造からスタートしましたが、1861年までにはバルカナイトゴム製の眼鏡フレームなど、精密な視覚製品へと幅を広げました。

19世紀後半には、顕微鏡や写真用レンズ、双眼鏡、望遠鏡など、光学機器全般へと事業を拡大。1892年からはドイツのツァイス社と協力して光学レンズを製造し、20世紀初頭には米国で初めて光学品質のガラス製造に成功しました。これにより、カメラのシャッターやプロジェクターなど、多岐にわたる精密機器の提供が可能となりました。

時代の要請と技術の転換点
20世紀の二度の世界大戦は、同社の製品ラインナップに大きな影響を与えました。軍事的な需要が高まったことで、潜望鏡や魚雷発射管の照準器、測距儀などの高度な光学機器の開発が加速し、1930年代には生産量の約70%を軍事製品が占めるまでになりました。また、1936年にはパイロット向けに開発された伝説的なサングラスブランド「Ray-Ban(レイバン)」を誕生させています。
その後、同社は視覚ケアの革命とも言える「ソフトコンタクトレンズ」の開発に乗り出します。1965年にチェコの研究者が開発したハイドロゲルレンズの特許を取得し、多額の投資とFDA(米国食品医薬品局)の承認を経て、1971年にPoly-HEMA素材のソフトレンズ「Soflens」を発売しました。これにより、従来のガラス製やアクリル製レンズに代わる、快適な装着感を持つレンズが普及することとなりました。
現代の事業構造と専門領域
現在のBausch + Lombは、主に以下の4つのセグメントで事業を展開しています。
1. ビジョンケア(Vision Care)
同社の主軸事業であり、2025年第1四半期の売上の58%を占めています。1日使い捨ての「Biotrue ONEday」や、高い含水率と快適性を追求したシリコーンハイドロゲルレンズ「Bausch + Lomb ULTRA」など、乱視や老眼に対応した高度なレンズを提供しています。
2. コンシューマー製品およびアイケア
コンタクトレンズ用洗浄液や点眼薬、サプリメントを展開しています。特にドライアイ対策に注力しており、2018年発売の「Lumify」や、2023年にジョンソン・エンド・ジョンソン社から買収した「Blink」ポートフォリオが代表的です。また、加齢黄斑変性(AMD)のリスク低減を目指す「PreserVision」などのサプリメントも展開しています。
3. 医薬品(Pharmaceuticals)
緑内障、眼内炎症、眼圧上昇、網膜疾患などの治療薬を製造しています。近年ではドライアイ治療に特化し、2023年にFDA承認を得た「Miebo」や、ノバルティス社から買収した「Xiidra」などを通じて、炎症抑制や涙の蒸発防止といった異なるアプローチでの治療を提供しています。
4. 外科手術用器具(Surgicals)
眼科手術に使用される眼内レンズや手術用器具などの専門製品を提供し、外科的治療の精度向上に寄与しています。

企業概要まとめ
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 本社所在地 | カナダ オンタリオ州ヴォーン |
| 主要上場市場 | NYSE / TSX (ティッカー: BLCO) |
| 売上高 | 37.7億米ドル |
| 純利益 | 600万米ドル |
| 総資産 | 111億米ドル |
| 従業員数 | 約12,900名 |
Frequently Asked Questions
Bausch + Lombはどのような製品を製造していますか?
主にコンタクトレンズ(ソフトレンズ、シリコーンハイドロゲルレンズ)、レンズケア用品(洗浄液、点眼薬)、眼科用処方薬、および眼科手術に使用される医療器具を製造・販売しています。
ソフトコンタクトレンズの開発における同社の功績は何ですか?
1965年にハイドロゲルレンズの特許を取得し、1971年にPoly-HEMA素材を用いたソフトコンタクトレンズ「Soflens」を発売したことで、従来の硬いレンズから柔らかく快適なレンズへの転換をリードしました。
Ray-Ban(レイバン)との関係はどうなっていますか?
Ray-Banは1936年にBausch + Lombによってパイロット向けに開発されましたが、1999年にイタリアのルックスオティカ(Luxottica)グループに売却されました。
ドライアイ治療においてどのようなアプローチをとっていますか?
処方薬の「Miebo」で涙の蒸発を防ぎ、「Xiidra」で炎症を抑えるという、異なるメカニズムを持つ薬剤を提供することで、患者の状態に合わせた治療を可能にしています。
企業の所有形態はどのように変化してきましたか?
創業以来の公社的な形態から、2007年にプライベートエクイティのWarburg Pincusによる買収を経て、2013年にValeant Pharmaceuticals(現Bausch Health)に買収されました。その後、2022年に再び新規株式公開(IPO)を行い、上場企業となりました。
References
- "Bausch + Lomb Corporation 2022 Annual Report (Form 10-K)". . February 22, 2023.
- "Bausch + Lomb introduces new logo, icon". March 3, 2010.
- "FORM 10-Q".
- Gorbman, Randy. "Bausch + Lomb marks 50th anniversary of the soft contact lens". CITY News. Retrieved April 1, 2021.
- "Eye product concern slams Bausch & Lomb". NBC News. April 11, 2006. Retrieved August 25, 2021.
- "Contact Lenses Market Size, Share & Covid-19 Impact Analysis". Fortune Business Insights. April 2023. Retrieved May 28, 2023.
- "Bausch & Lomb: The Bausch + Lomb story". Archived from the original on May 1, 2007. Retrieved April 19, 2007.
- "Valeant to buy contact-lens giant Bausch & Lomb for $4.5 billion". . May 27, 2013.
- "Valeant Agrees to Buy Bausch & Lomb in $8.7 Billion Deal". Bloomberg.com. May 28, 2013. Retrieved March 14, 2017.
- "Form 8-K".
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