企業の複雑な構造やプロセスを可視化し、最適化するための手法であるエンタープライズモデリングにおいて、国際標準規格であるISO 19439は重要な指針となります。David Shorter(2004)によれば、この規格はCIMOSA(Computer Integrated Manufacturing Open Systems Architecture)と類似したアプローチを採用しており、企業モデルを構築するための3つの異なる「次元」を定義しています。

これらの次元を適切に組み合わせることで、抽象的な概念から具体的な実装までを体系的に管理することが可能になります。

Key Facts

  • ISO 19439は、CIMOSAに似た構造を持つエンタープライズモデリングの標準規格である。
  • モデルのライフサイクルを管理する「モデルフェーズ」が定義されている。
  • 視点によって情報をフィルタリングする「ビュー次元」が存在する。
  • 抽象度を制御する「汎用性次元」により、一般論から個別具体例までをカバーする。

エンタープライズモデルを構成する3つの視点

ISO 19439では、モデルを多角的に捉えるために「フェーズ」「ビュー」「汎用性」という3つの軸を用いています。これにより、モデル作成者と利用者が共通の理解を持ちながら、詳細な設計へと落とし込むことができます。

1. モデルフェーズ(Model Phase)

モデルフェーズとは、モデリング対象となる実体のライフサイクルに合わせた、モデル自体の発展段階を指します。単に図を作成するだけでなく、定義から運用、そして廃棄に至るまでの時間軸に沿ったプロセスとして捉えます。

具体的には、以下の段階を経てモデルが構築されます:

  • ドメイン識別:対象となる領域を特定する。
  • 概念定義:基本的な考え方や概念を定める。
  • 要件定義:必要な機能や条件を明確にする。
  • 設計仕様:具体的な構造を設計する。
  • 実装記述:実際にどのように構築するかを記述する。
  • ドメイン運用:構築したモデルを実運用に適用する。
  • 廃棄定義:モデルやシステムの終了・廃棄について定義する。

2. ビュー次元(View Dimension)

ビュー次元とは、現実世界の膨大な情報の中から、特定の目的や役割に応じて必要な情報だけを抽出(フィルタリング)して観察する視点のことです。これにより、複雑な企業構造を整理して把握することが可能になります。

標準的に定義されているビューは以下の通りです:

  • 機能ビュー:どのような機能が提供されるかに焦点を当てる。
  • 情報ビュー:データの流れや情報の構造を重視する。
  • リソースビュー:設備や人員などの資源に注目する。
  • 組織ビュー/意思決定ビュー:組織構造や権限、決定プロセスを可視化する。

3. 汎用性次元(Genericity Dimension)

汎用性次元は、モデルの抽象度を制御する軸です。あらゆる企業に適用できる一般的な概念から、特定の1社にのみ適用される具体的なモデルまでを3つのレベルで使い分けます。

  • 汎用レベル(Generic Level):普遍的な概念を扱う最上位の抽象レベル。
  • 部分的レベル(Partial Level):ある程度の共通性を持ちつつ、特定の傾向を持つ中間レベル。
  • 個別レベル(Particular Level):特定の組織や状況に完全に特化した詳細レベル。

ISO 19439 モデリング次元のまとめ

ISO 19439における3つの次元の概要
次元名 目的・役割 主な構成要素・レベル
モデルフェーズ ライフサイクルに沿った段階的構築 ドメイン識別概念定義 → 要件定義 → 設計 → 実装 → 運用 → 廃棄
ビュー次元 視点による情報のフィルタリング 機能、情報、リソース、組織/意思決定
汎用性次元 抽象度から具体度への移行管理 汎用レベル、部分的レベル、個別レベル

Frequently Asked Questions

ISO 19439とCIMOSAにはどのような関係がありますか?

David Shorter(2004)の指摘によれば、ISO 19439はCIMOSAと類似したアプローチを採用しており、エンタープライズモデリングにおける構造的な考え方を共有しています。

モデルフェーズにおいて「ドメイン識別」とは何をすることですか?

モデリングを行う対象となる企業の領域や範囲を明確に特定し、どこまでをモデルに含めるかを決定する初期段階のプロセスです。

ビュー次元を利用するメリットは何ですか?

現実世界の複雑な情報をすべて一度に扱うのではなく、機能やリソースといった特定の視点でフィルタリングすることで、モデル作成者や利用者が理解しやすい形式で情報を整理できる点にあります。

汎用性次元の「部分的レベル」とは具体的にどのような状態を指しますか?

完全に普遍的な「汎用レベル」と、特定の1社に限定された「個別レベル」の中間に位置します。例えば、特定の業界全体に共通するモデルなどがこれに該当します。