膨大な情報の中から目的のデータを正確に抽出するためには、検索者と索引作成者が同じ概念に対して同じ言葉を使う必要があります。この「言葉の不一致」を解消し、効率的な情報検索を実現するための国際的な指針となるのがISO 25964です。本規格は、シソーラス(概念の関連性を体系化した制御語彙)の構築と、異なる語彙体系間の連携を定義しています。
Key Facts
- 目的:索引作成者と検索者が同一の用語を選択できるようにし、検索精度を向上させること。
- 構成:「情報検索のためのシソーラス(Part 1)」と「他の語彙との相互運用性(Part 2)」の2部構成。
- 背景:旧規格(ISO 2788およびISO 5964)を統合し、現代のネットワーク環境やセマンティックウェブに対応。
- 提供内容:シソーラスの構築手法、データモデル、XMLスキーマ、および異なる知識組織システム(KOS)間のマッピング指針。
ISO 25964の成り立ちと歴史
シソーラスに関する国際標準の歴史は古く、1974年に単言語シソーラスのためのISO 2788が、1985年には多言語対応のISO 5964が発行されました。これらの規格は世界各国で採用されましたが、インターネットの普及に伴い、デジタルネットワーク時代に即した刷新が必要となりました。
そこで、英国標準規格であるBS 8723(2005-2008年発行)をベースに、ISO/TC 46/SC 9のワーキンググループが国際規格への適応を進めました。その結果、2011年にPart 1が、2013年にPart 2がそれぞれ発行され、従来のISO 2788およびISO 5964に代わる現代的な標準として確立されました。
Part 1:情報検索のためのシソーラス構築
ISO 25964-1は、特定のコンテキストにおいて索引付けに使用される概念をリスト化し、管理する方法を定めています。各概念には「優先用語」と「同義語」が割り当てられ、概念間の関係性を定義することで、ユーザーが直感的に検索クエリを拡張できるよう設計されています。
定義される主な関係性
- 同等関係(Equivalence):類義語や同義語の結びつき(例:「オートバイ」と「モーターサイクル」)。
- 階層関係(Hierarchical):上位概念と下位概念の結びつき(例:「花」という広義語と「バラ」という狭義語)。
- 関連関係(Associative):階層ではないが密接に関連する概念(例:「疾患」とその原因となる「ウイルス」)。
また、多言語シソーラスにおいては、異なる言語間での同等関係の構築についても推奨事項が示されています。技術的な実装を支援するため、データ交換用のデータモデルやXMLスキーマも提供されており、これらはNISO(米国国家情報標準協会)の公式サイトで無料で公開されています。
Part 2:異なる語彙体系との相互運用性
現代の組織では、図書館カタログ、社内イントラネット、研究データベースなど、場所によって異なる知識組織システム(KOS: Knowledge Organization System)が利用されています。ISO 25964-2は、これらの異なる体系を組み合わせて利用する際の課題を解決するための指針を提供します。
具体的には、分類体系(Classification schemes)、タクソノミー(Taxonomies)、オントロジー(Ontologies)、権限リスト(Name authority lists)などの異なるKOS間で、用語や概念をどのようにマッピング(対応付け)させるかを定義しています。これにより、異なるプラットフォームや言語をまたいだ横断的な検索が可能になります。
関連規格との比較と互換性
ISO 25964は、他の標準規格とも密接に関連しています。例えば、米国のANSI/NISO Z39.19は単言語の制御語彙を扱っており、ISO 25964-1と概ね互換性があります。ただし、Z39.19は多言語対応やKOS間のマッピングといった相互運用性の側面はカバーしていません。
また、セマンティックウェブの文脈では、W3Cが推奨するSKOS(Simple Knowledge Organization System)が重要な役割を果たしています。SKOSはウェブ上の簡易的なKOS全般に適用されるものであり、ISO 25964と非常に親和性の高い関係にあります。
| 項目 | Part 1 (ISO 25964-1) | Part 2 (ISO 25964-2) |
|---|---|---|
| 主な焦点 | シソーラスの構築と管理 | 異なる語彙体系間の相互運用性 |
| 中心的な機能 | 優先用語、同義語、概念関係の定義 | KOS間のマッピングと連携 |
| 対象範囲 | 単言語および多言語シソーラス | タクソノミー、オントロジー、分類体系など |
| 技術的提供 | データモデル、XMLスキーマ | 相互運用性のためのガイドライン |
Frequently Asked Questions
ISO 25964を導入する最大のメリットは何ですか?
索引を作成する側と検索する側が同じ用語を使用するように誘導できるため、検索漏れを防ぎ、目的のドキュメントを正確に抽出できる(検索精度の向上)ことが最大のメリットです。
Part 1とPart 2の違いを簡単に教えてください。
Part 1は「一つのシソーラスをどう作るか」という内部的な構築ルールを定めたものです。対してPart 2は「作ったシソーラスを他の異なる語彙リストとどう連携させるか」という外部的な接続ルールを定めたものです。
SKOSとは何ですか?ISO 25964との関係は?
SKOSはW3Cが策定したウェブ上の知識組織システムのための標準です。ISO 25964が詳細な構築・運用指針を提供するのに対し、SKOSはウェブ上でのデータ交換を簡素化することに特化しており、両者は補完的な関係にあります。
この規格は無料で利用できますか?
規格書自体はISOや各国の標準化団体から購入する必要がありますが、データモデルやXMLスキーマなどの一部の技術資料は、NISOの公式サイトで無料で公開されています。
どのような関係性がシソーラスで定義されますか?
主に「同等関係(類義語)」、「階層関係(上位・下位概念)」、「関連関係(非階層的な密接な関係)」の3種類が定義されます。
References
- "ISO 25964 – the international standard for thesauri and interoperability with other vocabularies". Archived from the original on 2011-11-02. Retrieved 2011-09-25.