環境規制が世界的に厳格化する中で、往復動内燃機関(ピストンが上下運動して動力を得るエンジン)から排出されるガスや粒子の正確な測定は不可欠です。ISO 8178は、これらの排出量を一貫した方法で評価するための包括的な国際規格であり、測定システムから試験手順、報告形式までを詳細に規定しています。
この規格は単一の文書ではなく、用途や測定環境に応じて複数のパートに分かれて構成されており、エンジンの性能評価や法規制への適合性を証明するための世界的な基準となっています。
主要な事実(Key Facts)
- ISO 8178は、内燃機関のガス状および粒子状排出物の測定に関する国際標準である。
- 全11のパートで構成され、試験ベンチでの測定から実地(フィールド)での測定までをカバーしている。
- 圧縮点火エンジン(ディーゼルエンジンなど)向けの煙排出測定手順が具体的に定義されている。
- 試験燃料の選定や、エンジンのグループ化・ファミリー化といった分類基準も含まれている。
- 一部のパート(Part 10およびPart 11)は、規格の更新に伴い現在は廃止されている。
ISO 8178の構成と詳細
測定環境とシステム
排出ガスの測定は、制御された環境である「試験ベンチ」と、実際の運用状況を再現する「フィールド(実地)」の2つのアプローチに分かれています。Part 1では試験ベンチにおける測定システムを、Part 2では実地条件下での測定方法をそれぞれ規定しています。
エンジンの分類と試験条件
効率的な試験を行うため、すべてのエンジンを個別にテストするのではなく、共通の特性を持つ「エンジンファミリー(Part 7)」や「エンジングループ(Part 8)」として分類する手法が導入されています。また、定常状態および過渡状態(負荷が変動する状態)における試験サイクルについてはPart 4で定義されており、用途に応じた適切な評価が可能です。
圧縮点火エンジンへの特化アプローチ
特に煙の排出が課題となる圧縮点火エンジンに対しては、フィルター式煙測定計を用いた手順(Part 3)や、過渡条件下での試験ベンチ測定(Part 9)など、専門的な測定手法が設けられています。
運用上の共通基準
測定の信頼性を担保するため、使用する試験燃料の規格(Part 5)や、得られた結果をどのように記録し報告するかというレポート形式(Part 6)が厳格に定められています。
ISO 8178 各パートの一覧表
| パート | 規定内容 | ステータス |
|---|---|---|
| Part 1 | 試験ベンチによるガス状・粒子状排出物の測定システム | 有効 |
| Part 2 | 実地条件下でのガス状・粒子状排出物の測定 | 有効 |
| Part 3 | フィルター式煙測定計を用いた圧縮点火エンジンの煙排出測定 | 有効 |
| Part 4 | 各種エンジン用途向けの定常および過渡試験サイクル | 有効 |
| Part 5 | 試験用燃料 | 有効 |
| Part 6 | 測定結果および試験の報告書 | 有効 |
| Part 7 | エンジンファミリーの決定 | 有効 |
| Part 8 | エンジングループの決定 | 有効 |
| Part 9 | 過渡条件下での圧縮点火エンジンの煙排出測定(試験ベンチ) | 有効 |
| Part 10 | 過渡条件下での圧縮点火エンジンの煙排出測定(実地) | 廃止 (2019年) |
| Part 11 | 非道路移動機械用エンジンの過渡条件下での排出物測定(試験ベンチ) | 廃止 (2014年) |
Frequently Asked Questions
ISO 8178はどのようなエンジンに適用されますか?
主に往復動内燃機関に適用されます。これには、産業用や車両用など、ピストン運動を利用して動力を発生させる様々なエンジンが含まれます。
「試験ベンチ」と「フィールド測定」の違いは何ですか?
試験ベンチ(Part 1)は、制御された実験室環境で精密な測定を行う手法です。一方、フィールド測定(Part 2)は、実際の使用環境における排出状況を評価する手法を指します。
エンジンファミリーやグループとは何ですか?
設計や性能が極めて類似しているエンジンの集まりのことです。Part 7およびPart 8に基づきこれらを定義することで、代表的なエンジンのみを試験し、その結果をグループ全体に適用させることができ、試験コストの削減が可能です。
現在利用できないパートはありますか?
はい。Part 10(実地での煙排出測定)は2019年に、Part 11(非道路移動機械の過渡測定)は2014年にそれぞれ廃止されています。
圧縮点火エンジン向けに特別な規定があるのはなぜですか?
圧縮点火エンジン(ディーゼル等)は、ガソリンエンジンとは異なる燃焼特性を持ち、特に「煙(スモーク)」の排出評価が重要であるため、Part 3やPart 9などで専用の測定手順が設けられています。