映画批評の世界には、あえて主流の意見に反し、独自の視点から作品を切り裂く批評家が存在します。アーモンド・ホワイト(Armond White)は、まさにその代表格と言える人物です。アメリカの映画・音楽批評家として、妥協のない評価と挑発的なスタイルで知られる彼は、批評界において常に議論の中心に立ち続けてきました。
主要な実績と経歴
- 多様な執筆活動: National ReviewやOutなどの媒体で執筆し、過去にはNew York Pressのリード映画批評家やCityArtsの編集者を務めた。
- 学術的背景: ウェイン州立大学でジャーナリズムの学士号を、コロンビア大学大学院で映画の美術修士(MFA)を取得。
- 業界での役割: ニューヨーク・フィルム・クリティクス・サークル(NYFCC)の会長を3度歴任し、サンダンスやトリベカなどの著名な映画祭で審査員を務めた。
- 受賞歴: 音楽批評におけるASCAP Deems Taylor賞や、表現の自由を称えるアメリカ・ブック・アワードの「反検閲賞」を受賞。
映画に対する独自の視点と評価軸
ホワイトの批評スタイルは、世間の評価や「ハイプ(過剰な宣伝)」に流されないことにあります。彼は、多くの批評家が絶賛する作品に厳しい目を向け、逆に過小評価されている作品に光を当てることで知られています。
絶賛する作品と監督
彼はD.W.グリフィスの『イントレランス』を史上最高の映画と称し、21世紀においてはスティーヴン・スピルバーグの『A.I.』を最高傑作に挙げています。また、ザック・スナイダーやクリント・イーストウッド、アラン・レネといった監督たちの作品を高く評価しています。
批評界への挑戦
現代の映画批評や映画賞のあり方には極めて批判的です。例えば、Sight and Sound誌の2022年版「史上最高の映画」ランキングで『ジャンヌ・ディルマン』が1位に選ばれたことに対し、政治的な理由による選択であると激しく非難しました。彼は、自身の選ぶべき傑作として『大脱走』や『戦艦ポチョムキン』などを挙げています。
LGBTQ+映画へのアプローチ
ゲイ映画についても独自の視点を持っており、『ブロークバック・マウンテン』などの主流な作品に否定的な評価を下す一方で、『God's Own Country』や『Summer of 85』などを高く評価しています。
論争と物議を醸したエピソード
その攻撃的なスタイルは、しばしば業界内での衝突を招いています。2014年には、スティーヴ・マクィーン監督への不適切な言動があったとして、ニューヨーク・フィルム・クリティクス・サークルから除名されました。ホワイト本人はこれを「中傷キャンペーン」であると否定していますが、この出来事は批評界における表現の自由とマナーの境界線を巡る議論を呼びました。
また、伝説的な批評家ロジャー・エバートとの対立も有名です。エバートはホワイトを「知的だが、意図的に人を怒らせるトロール(煽り屋)」と評しました。対してホワイトは、エバートの批評は単なる「おしゃべり」に過ぎず、映画批評という文化を破壊したと激しく批判しています。
アーモンド・ホワイトのプロフィールまとめ
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 出身地 | アメリカ合衆国ミシガン州デトロイト |
| 主な専門分野 | 映画批評、音楽批評 |
| 支持する監督 | S.スピルバーグ、Z.スナイダー、C.イーストウッド等 |
| 批評スタイル | 反主流主義的、挑発的、保守的な視点 |
| 主な著書 | 『Make Spielberg Great Again』など |
Frequently Asked Questions
アーモンド・ホワイトはどのような批評スタイルで知られていますか?
世間的な評価やトレンドに敢えて逆行し、独自の基準で作品を評価する「コントラリアン(反主流派)」なスタイルで知られています。主流の批評家が絶賛する作品を切り捨て、逆に不評な作品を再評価することが多いのが特徴です。
なぜ彼はニューヨーク・フィルム・クリティクス・サークルから除名されたのですか?
映画『12年奴隷』のイベントにおいて、スティーヴ・マクィーン監督に野次を飛ばした疑いがあるためです。ホワイト本人はこの主張を否定し、不当な排除であると訴えています。
彼が「史上最高」と評価している映画は何ですか?
映画史全体では『イントレランス』を、21世紀の作品の中では『A.I.』を最高傑作として挙げています。
ロジャー・エバートとの関係はどうだったのでしょうか?
非常に険悪な関係でした。エバートは彼を「トロール(煽り屋)」と呼び、ホワイトはエバートが映画批評の質を低下させたと主張し、互いに激しく批判し合っていました。
彼はどのような人物から評価されていますか?
その攻撃的な手法に賛否はありますが、一部の批評家からは「映画界に潜む人種差別を指摘できる数少ない黒人批評家であり、保守的な視点を持つ貴重な存在」として、その独自性と必要性が認められています。
References
- McGraw, Bill (January 18, 2014). "The Baddest Film Critic in New York Grew Up in Detroit and Went to WSU". Deadline Detroit. Archived from the original on November 3, 2023. Retrieved November 10, 2021.
This week, White, 60, made news when he was purged from the New York Film Critics Circle, the nation's oldest such group.
- "Armond White". The African-American Literature Book Club. Archived from the original on October 30, 2023. Retrieved July 10, 2023.
- McNeil, Daniel (2015). "The last honest film critic in America: Armond White and the children of James Baldwin". In Frey, Mattias; Sayad, Cecilia (eds.). Film Criticism in the Digital Age. New Brunswick, New Jersey: . pp. 61–78. .
- Moore, Jack (October 31, 2011). "The 14 Worst Movie Reviews From America's Jerk Film Critic". . Retrieved October 15, 2017.
{{}}: CS1 maint: deprecated archival service () - Brown, David Morgan (February 22, 2021). "Film Critic Armond White is Not a Troll". HighonFilms. Archived from the original on October 30, 2023. Retrieved December 5, 2022.
- Knipfel, Jim (August 24, 2020). "On the Upstart NYC Alt Weekly That Gave Us Armond White". Literary Hub. Archived from the original on November 15, 2021. Retrieved November 15, 2021.
Born in Detroit, Armond first appeared on the New York scene as editor of the Brooklyn's City Sun.
- Jacobson, Mike (February 15, 2009). "No Kiss Kiss, All Bang Bang". . p. 2. Archived from the original on August 14, 2024. Retrieved April 26, 2010.
- Staff (2004). "The Critic" Archived March 14, 2005, at the . Filmmaker Magazine. Retrieved April 20, 2010.
- Kipp, Jeremiah (April 2002). "Beyond Entertainment: An Interview With Film Critic Armond White" Archived June 26, 2009, at the . senses of cinema. Retrieved April 20, 2010.
- Lingan, John (May 15, 2008). "Interview: Armond White". SpliceToday.com. Retrieved April 27, 2010.
{{}}: CS1 maint: deprecated archival service ()