A StoryCorps MobileBooth parked at the Library of Congress
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StoryCorps人々の記憶を未来へつなぐアメリカのオーラルヒストリー・プロジェクト

私たちは誰しも、人生においてかけがえのない物語を持っています。しかし、その多くは記録されることなく、時とともに消えてしまいます。こうした個人の記憶を保存し、共有することで、人間としての共通点を見出し、互いへの信頼を深めることを目的としたのが、アメリカの非営利団体StoryCorps(ストーリーコープス)です。

2002年に設立され、ニューヨーク州ブルックリンに拠点を置くこの組織は、「一人ひとりの物語を通じて、私たちの中にある人間性と可能性を照らし出し、互いを信じ合えるようにする」というミッションを掲げています。ラジオプロデューサーのデイヴィッド・アイゼイによって立ち上げられたこのプロジェクトは、単なる録音活動を超え、アメリカという国の多様な声を収集する巨大なデジタルアーカイブへと成長しました。

Key Facts

  • 設立:2002年4月13日(ニューヨーク州ブルックリン)
  • 目的:あらゆる背景を持つアメリカ人の物語を記録・保存し、共有すること
  • 実績:全50州および領土で64万5,000人以上の参加者を記録
  • 保存先:米国議会図書館のアメリカン・フォークライフ・センターにアーカイブ
  • 主な手法:対面インタビュー、専用ブース、モバイルブース、スマートフォンアプリ

物語を記録する仕組みとアプローチ

StoryCorpsの活動の核心は、互いを大切に思う二人の間で行われる対話にあります。家族や友人、あるいは知人同士が、訓練を受けたファシリテーターの案内のもと、約40分間のインタビューを行います。参加者は録音データを無料で受け取ることができ、活動を維持するための寄付(推奨50ドル)が求められます。

特筆すべきは、参加者の同意を得た録音データが、次世代に引き継がれるよう米国議会図書館(Library of Congress)のアメリカン・フォークライフ・センターに永久保存される点です。また、特に印象的なエピソードは、全米放送のNPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)の番組『Morning Edition』で紹介されることもあります。

多様な録音手段

誰もが簡単に参加できるよう、StoryCorpsは複数の録音方法を提供しています。

  • StoryBooth:公共の場に設置された小型スタジオ。ニューヨークのグランドセントラル駅などで展開されました。
  • MobileBooth:エアストリームのトレーラーを改造した移動式スタジオで、全米各地を巡回しています。
  • リモートサービス:専門チームが訪問する「Door-to-Door」、録音機器を郵送する「StoryKit」、そして各自の機材で録音できる「Do-It-Yourself」の3種類があります。

A StoryCorps MobileBooth parked at the Library of Congress

さらに、2015年のTEDプライズなどの支援を受けて開発された専用アプリにより、スマートフォン一つでインタビューの準備から録音、アーカイブへのアップロードまで完結できるようになりました。

社会的な意義と特化型イニシアチブ

StoryCorpsは、社会的に重要な視点を持つ人々や、忘れられがちな声を拾い上げるために、多くの専門的なプロジェクトを展開しています。

StoryCorpsの主要イニシアチブ一覧
プロジェクト名 対象・目的
Military Voices 9.11以降の退役軍人、現役兵士とその家族の物語
Memory Loss アルツハイマー病などの記憶喪失を抱える方々の記録
Historias / Griot ラティーノおよびアフリカ系アメリカ人の経験と声の保存
September 11 2001年9月11日の生存者や救助隊員の記憶
Stonewall OutLoud LGBTQコミュニティの多様な物語の収集
Justice Project 大量投獄や刑事司法制度の影響を受けた人々の声
One Small Step 政治的見解が異なる人々が、人間として理解し合うための対話

また、教育分野では「StoryCorpsU」という高校生向けプログラムを提供し、インタビューを通じて自己認識や社会性を養う支援を行っています。さらに、重病を患う方々が人生の物語を残す「StoryCorps Legacy」など、コミュニティに根ざした活動を続けています。

評価と批判的な視点

その功績から、権威あるピーボディ賞を複数回受賞するなど高く評価される一方で、専門的な視点からの批判も存在します。一部のオーラルヒストリー研究者は、あらかじめ決められた質問や時間制限、スタッフの同席といった「形式化された手法」が、自然な対話ではなく、演出されたエピソードを引き出しやすいと指摘しています。

また、編集過程で感情的な盛り上がりや「生存の物語」といった予測可能な物語構成が優先される傾向があり、それが個人の運命を個人の努力のみに帰結させる新自由主義的な価値観を助長しているという意見もあります。さらに、NPRでの放送内容において、特定の人物を過度に同情的に描いた演出が、被害者の視点を軽視しているとしてリスナーから反発を招いた事例もありました。

Frequently Asked Questions

StoryCorpsのインタビューは誰でも受けられますか?

はい、可能です。公共の場にあるStoryBoothを訪れるか、モバイルブースの巡回時に参加できるほか、スマートフォンアプリや自宅用キットを利用して、誰でも自分の物語を記録することができます。

録音されたデータはどうなりますか?

参加者の同意がある場合、録音データは米国議会図書館のアメリカン・フォークライフ・センターにアーカイブされ、歴史的な資料として永久に保存されます。

インタビューには費用がかかりますか?

録音セッション自体は無料であり、参加者は自分の録音データを受け取ることができます。ただし、運営コストを補うため、50ドルの寄付が推奨されています。

どのような人がインタビューの相手に適していますか?

基本的には、友人、家族、あるいは知人など、お互いを大切に思い、深い対話ができる相手が推奨されています。

StoryCorpsが提供している教育プログラムとは何ですか?

「StoryCorpsU」という、高校1・2年生を対象としたプログラムです。インタビュー技術を学ぶことで、自己理解を深め、社会的なスキルや学業への意欲を高めることを目的としています。

References

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